天然皮革を模した素材のひとつである人工皮革。
今回は、そんな人工皮革の基本構造や合成皮革との違いなどについて解説します。
主要材料にもなっているポリウレタンの注意点もまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
人工皮革とは?
人工皮革は、動物の皮から成る天然皮革に似せたポリウレタン樹脂を主要原材料とする素材のことです。
一般的には製造方法と原材料が酷似している合成皮革と同じく、織物や不織布を使った基材の上にポリウレタン樹脂やナイロン樹脂をコーティングして作られています。
近年はより天然皮革に似せた人工皮革も増えています。
合成皮革との違い
人工皮革は合成皮革と同じく、織物や不織布などの基材の上にポリウレタン樹脂やナイロン樹脂をコーティングして作られていますが、この基材に特殊不織布を使っているか否かによって名称が変わります。
特殊不織布とは、ランダム三次元立体構造を有する繊維層を主とした基材にポリウレタン樹脂などを含浸させたものをいい、この特殊不織布を使用していれば人工皮革、使用していなければ合成皮革に分類されることになります。
しかしながら基本的な性質などはほぼ合成皮革と同様になります。
メリットとデメリット
人工皮革のメリットには以下のようなものが挙げられます。
- 安価
- 軽量
- 耐水性
使用している素材はどれも安価で安定した供給が保証されているものばかりなので、安価に素材を大量生産することが可能となっています。
なおかつ基材が布であるためとても軽量だという特徴を持ちます。
一方、デメリットは以下の通りです。
- 通気性
- 加水分解
表面がポリウレタン樹脂でコーティングされているため、防水面が高い反面、通気性が悪いことがデメリットとなります。
また、劣化現象が現れるスピードがとても速いのもデメリットとなります。
人工皮革の手入れについて
人工皮革に特別な手入れをする必要はありません。
また、人工皮革は手入れをせずとも、製造時から自然に劣化が進み、たった数年で加水分解と呼ばれる劣化現象を確実に起こす素材になります。
いわば製造された時が一番状態がよく、以降はどんな環境下でも自動的に劣化していくことになります。
主要原材料となっているポリウレタンは、保管方法に十分注意が必要となり、とくに以下のような環境下に弱いとされています。
- 水分
- 直射日光
- 高温多湿
これらの状況が重なると、最悪の場合で数か月も経たずして劣化が急激に進み、加水分解が起こります。
ですので、極力これらの環境下での使用や管理を避けることが大切になります。
ただ、どれだけ気を付けていても数年で加水分解のような劣化現象は起きてしまうので、購入する場合は事前に肝に銘じておくとよいでしょう。
人工皮革と環境問題
人工皮革は天然素材ではない為に決して土に還ることはありません。
石油製品でもある人工皮革は、燃焼時に有害物の排出や製造時のマイクロプラスチックの河川や海への排出が可能性として危惧されています。
焼却時に排出される二酸化炭素と有害物質は空気中に大量排出され、その一部は地上や海洋に吸収されています。
これらが人間を含む動物の内部に侵入すると各臓器の機能障害を引き起こす可能性が高まり、危険な状態に陥るといわれています。
このように人工皮革は、地球環境や人体にも回りまわって悪影響を及ぼしていることは、環境問題が叫ばれる今の時代を生きる上で知っておくべき事実かもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は人工皮革についてお話しました。
近年は人工皮革の製造技術が進歩したことで、見た目が天然皮革と見違えるものも増加しています。
しかしながらあくまでも天然皮革とは全く異なる素材であることには変わりがないため、天然皮革に見られるような性質や品質、耐久性も全く違うということを覚えておくとよいでしょう。