「周りの人はよくあなたを見ているもの。服装や持ち物には常に気を使いなさい。」

これは学校でも社会に出ても、上の立場の人からよく言われることですよね。。

あなたは電車や街中で、すれ違う人や向かい合う人の持ち物に視線が向いてしまうことはありませんか?

どうしても私は職業上、革に携わっているせいか、周りの人の革製品を見てしまう癖があります。

素敵なデザインや素材の鞄。
スタイリッシュできちんとお手入れされたビジネスシューズ。

たくさん魅力的な革製品を見ることができて、それが毎日の小さな楽しみでもあります。

しかし残念なことがひとつ。

それはボロボロになった合皮素材の鞄などの製品を使い続けている方が想像以上に多いこと。
合皮素材の宿命ともいえる、製品の表面がボロボロにひび割れるこの現象を、「加水分解」と呼びます。

そんな状態の製品は、見ている側をちょっぴり空しい気持ちにさえしてしまいます。

今回は、そんな合皮(フェイクレザー)に見られる加水分解について解説します。

誰が使っても起こる合皮の加水分解。加水分解が起こるメカニズムとは?


加水分解を起こしたバッグのハンドル部分

加水分解とは、合皮製品の劣化の現象のひとつです。
別名:水解(すいかい)とも呼ばれます。

主に合皮などのポリウレタン素材やPVC(ポリ塩化ビニール)を使った製品に起こるもので、空気中の水分や日常で浴びるような量の紫外線、軽い摩擦、さらには小さなゴミの付着でさえが原因となって、表面が劣化していきます。

その見た目は、地割れのように表面にひび割れが起こり、ボロボロで醜い状態に。


加水分解したレザージャケット

分かりやすい例でいうと、皆さんが長年使っていたランドセルも合皮素材が多く、6年生になる頃にはランドセルがボロボロに、表面が剥げていた記憶はありませんか?

加水分解は、ポリウレタンなどを主な素材としている製品を使う限り、決して避けられるものではなく、お手入れで元の状態に戻すことは全くできません。

つまり、素材の元々の短所とはいえ、おおよそ2年~3年で加水分解は高確率で起こります。

加水分解を引き起こす、ポリウレタンの性質

ポリウレタンはウレタン結合を持つ化合物を総称する言葉です。

ポリウレタンは、身近なものではキッチン用のスポンジ、スニーカーのソールがあり、非常に安価で便利な素材として様々なものに幅広く活用されています。

通常、合皮は下地のマイクロファイバー(布)の上に、PVCやポリウレタン、合成樹脂が層のように重なって塗られて作られています。

そして、最終のコーティングで使われるのがPVCやポリウレタン。
この部分が加水分解を引き起こす原因です。

加水分解はこのポリウレタンが空気中の水分や日常で浴びるような量の紫外線、軽い摩擦熱にも敏感に反応して、素材分解が毎日少しずつされることで起こります。

このような加水分解とに加え、合皮素材にはもう一つ「あるある」の困った点が。

それは、ポリウレタンが高い気温などによって溶解し、製品全体がベトベトになってしまうという、なんとも嫌な劣化も起こります。

また、ポリウレタンは石油から作られている為、場合によっては石油製品ならではの異臭がする場合も。。。

保管する場所や環境によっては、たった2年以下で使えない製品になってしまうんです。

合皮かどうかを見極めることが大切。

さて、合皮は必ず加水分解を起こすことがお分かりいただけたと思います。

もちろん合皮にも、「軽い」「安い」といった本革にはないメリットがあるので、モノを買う際には、合皮の長所と加水分解を起こすなどの短所を天秤にかけてみることが大切かもしれません。

敏感肌の方であれば、合皮素材にアレルギー反応を示してしまう場合もあるため、見た目だけで合皮か本革かが分かりにくければ、直接その商品を管理する店員にしっかりと聞いてみましょう。

合皮製品の中には、商品のタグにポリウレタンの記載がない場合もあります。

見た目だけでは判断できないこともあり、しっかりと素材をチェックする必要があります。

まとめ

いかがでしょうか?

もしあなたの持ち物の中に合皮素材があれば、合皮内に含まれたポリウレタンの劣化は、あなたの使い方に関係なく、“確実”に起こり、それは購入時でなく製造時からすでに劣化は始まっています。

これを機に、あなたもモノの不変的な美しさのある革製品に変えてみませんか?

合皮にはないその魅力を必ず感じさせる、革製品。

何度も製品を買う。そして劣化させる。
これを繰り返すことは、「モノと大切にする」という点で、賢明な考え方ではありません。

ぜひモノを長く使うことの良さに同感していただけるのであれば、合皮とは違う、革製品の魅力を知る機会にしていみてはいかがでしょう?

sot(ソット)のサステナビリティ。