比較的新しい製法ながら、現在ある鞣し製法の主流となった、クロム鞣し。
この記事では、そんなクロム鞣しの特徴と歴史について解説します。
クロム鞣しとは?
クロム鞣しとは、塩基性硫酸クロムを鞣し剤に使用した鞣し製法のこと。
材料
塩基性硫酸クロム塩(クロム化合物)の元は、クロム鉱石から作られています。
クロム鉱石は、主にアフリカ諸国・ロシア・アルゼンチンといった国々で産出されています。
また、硫酸クロム・重クロム酸ナトリウム・カリウム塩・クロム塩などが鞣し剤に用いられることがあります。
製法
石灰乳に浸して脱毛処理をしたのち、鞣し剤が浸透しやすくなるように皮を酸性にしてから、クロム鞣しは施されます。
酸性となった皮を巨大な回転式のドラム(タイコ)に入れ、遠心力を利用して、鞣し剤を短時間で浸透させます。
ドラムの大きさによって違いはあるものの、大量の皮を短時間で鞣すことができます。
クロム鞣しを施したばかりの皮の色は、やや青みがかっていることから“ウェットブルー”と呼ばれてます。
歴史
クロム鞣しは、近代の資本主義の台頭に伴い、皮革産業が急速に進化したことによって生まれた、比較的新しい製法。
クロム化合物が鞣し剤として利用できることがドイツの科学者よって発見され、1884年にアメリカの科学者によって、皮革の鞣し剤として実用化されました。
また、1893年には、現在とほぼ同じ、塩基性硫酸クロムを使用した鞣し製法が確立。
1960年代には、塩基性クロム塩が粉末化と量産化され、鞣し製法の主流となりました。
クロム鞣しは、大量生産に適した製法であったことから、“大量生産・大量消費”が重要視されるようになった、19世紀から20世紀において、圧倒的な経済効果を与えました。
また、第二次世界大戦による軍用革製品の需要拡大もまた、クロム鞣しの普及に大きな影響を及ぼしたとされています。
現在、市場に流通している革製品のほとんどが、このクロム鞣しを施した“クロム鞣し革”となっており、衣類・手袋・家具などによく見ることができます。
クロム鞣し革について
特徴
クロム鞣し革には、以下のような特徴があります。
- 耐水性があり、シミになりづらい
- 可塑性に劣っている
- 耐熱性がある
- 染色性に優れており、鮮やかな色にできる
- 柔軟性、弾力性、抗張力、耐熱性に優れ、耐久性がある
クロム鞣し革の特徴は、超高熱にも耐えうる、高い耐熱性などがあります。
そのほか、比較的価格が低いことも特徴。
ただ、クロム鞣しの鞣し剤に使用されている塩基性硫酸クロムは重金属となるため、アレルギー反応が出ることがあるなど、健康面に影響を及ぼすことがあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
クロム鞣しは、経済合理性のある鞣し製法となっています。
また、クロム鞣し革は他の革に比べて、耐久性が高いなど、優れた特徴がたくさんあります。
ただ、天然素材ならではの自然な革らしい特徴はほとんどないため、植物タンニン鞣し革と比較をしたうえで、革製品を選ぶとよいかもしれません。
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