自然の植物から採れるタンニンを使って革を作る、植物タンニン鞣し製法。

この鞣し製法は、人類が皮を利用し始めて間もないころから存在する最古の製法です。

いまや主流となったクロム鞣し製法とは大きく異なる性質を持ち、革本来の魅力の詰まった革を作ることができる植物タンニン鞣し。

今回は、そんな植物タンニン鞣しの特徴や歴史に加えて、植物タンニン鞣し革の魅力も併せてご紹介します。

植物タンニン鞣しについて

植物タンニン鞣しとは、自然の植物の樹皮などから採取できるタンニンを主成分にした鞣剤を使った鞣し製法のこと。

歴史上最も古い鞣し製法であり、その歴史は古代エジプト時代まで遡ります。

原料となる植物タンニンは、含有量が植物の種類や部位によって差はあるものの、ほとんどの植物の樹皮・木質部・葉・根・果実の中に含まれています。

最も一般的に使われているのはケブラチョという南米を中心に生育する木から採取されたタンニンで、ケブラチョのタンニンは色が赤みがかっており、鞣しに使うことで革の色を温かみのあるトーンに仕上げることができることから人気の種となっています。

そんな植物タンニンを用いた鞣剤は、原皮である動物の皮の真皮を耐久性のある革に変化させる効果があり、可逆性や成型性に優れています。

革の鞣しに使われるタンニンとは。その驚くべき効果をご紹介!

植物タンニン鞣しの歴史

植物からタンニンを採取して革を鞣すという行為は、先史時代の紀元前600年頃から存在していたとされています。

本格的に鞣しにタンニンが使われ始めたのは、約200年前のイギリス。

当時、イギリスの皮革産業における鞣しには、木材の一種であるオーク材のタンニンを使っていました。

しかしながら、オーク材に含まれるタンニンは濃度が低く、鞣しにかなりの時間を要することから生産効率が悪く、研究者が理想的なタンニンを探し求めて世界中を回り始めるようになります。

その結果、オーク材以外にも様々な植物にタンニンが含まれていることが確認されることとなり、以降は様々な植物のタンニンを使った革づくりが研究を通して行われるようになりました。

そのなかでも、栗から採取したタンニンもオークと同じく古くからよく利用されていたとされ、いまでも革を丈夫にする特性を持つ栗のタンニンは、靴の底革などを鞣すために利用されています。

現代でも植物タンニン鞣しは、数か月という長い時間をかけて皮をゆっくりと濃度の薄いタンニン液から濃いタンニン液に浸していくという基本的な製法が変わらずに採用されています。

より効率的に鞣しができるよう、巨大なドラムに革と鞣剤を入れて鞣しを行う方法が主流となってはきていますが、時間と手間をかけて革が生まれていることに変わりはありません。

オーク、ヌルデ、ケブラチョなど。植物タンニンを作り出す木々をご紹介

植物タンニン鞣し革の特徴

天然の革本来の風合いが楽しめる

現代の主流となっているクロム化合物を鞣剤として利用するクロム鞣しに比べ、植物タンニン鞣しは数倍の時間をかけて革を鞣すというとても効率の悪い鞣し製法です。

しかしながら、時間をかけて丁寧に鞣された植物タンニン革だからこそ味わえる、革らしい特徴があることも忘れてはいけません。

その特徴のひとつに魅力溢れるエイジングがあります。

革を使いこむことで色艶が美しく劇的に変化する姿は、他の鞣し革では見ることのできない植物タンニン鞣し革ならではの大きな特徴になります。

また、植物タンニン鞣し革は、鞣剤の革のたんぱく質を結合させる優れた効能により、革の耐久性が高いので、他の革に比べて耐久性のある素材となっています。

環境にやさしい

自然界の植物から採取したタンニンによって鞣された植物タンニン鞣し革は、たとえ燃焼廃棄をしても有害物質を排出することはありません。

さらには土中に埋めた場合には、組織分解が進んで土に再び還るという天然素材ならではの特性を持ち合わせています。

このように植物タンニン鞣し革は環境によいエコ素材としても知られており、地球環境問題が叫ばれる現代において再び注目を集めています。

サステナビリティレポート。レザーブランドとしての取り組みをご紹介!

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は植物タンニン鞣しの特徴や歴史について解説しました。

植物タンニン革は耐久性に優れており、これらの特性を必要とする靴や鞄などによく利用されています。

圧倒的な手間と時間がかかるうえ、広大な施設と敷地を必要とする植物タンニン鞣しは、日本国内では数少ない製法となっており、植物タンニン鞣し革の生産量は減少の一途を辿っています。

しかしながら、植物タンニン革の自然的な風合いは、本物志向のある世界中の革好きから圧倒的な人気を誇ります。

革好きであれば使ってみたい、植物タンニン鞣し革をあなたもぜひ使ってみませんか?

イタリア植物タンニンなめし革協会とは?

鞣し(なめし)とは。皮が革に変わる瞬間。