植物タンニン鞣し革の鞣しに欠かすことのできない材料である、植物タンニン。

植物タンニンは、世界中に自生するあらゆる植物から採取されています。

この記事では、そんな植物タンニンを作り出す、主な植物の特徴について解説します。

植物タンニンとは?

植物タンニンはあらゆる植物に含まれる、ポリフェノール化合物の一種。

その含有量は植物の種類や部位によって違いがあるものの、ほとんどの植物の樹皮・木質部・葉・根・果実の液中などに含まれています。

植物タンニンの種類は、なんと150種類を超えるともいわれます。

そんな植物タンニンは、動物や害虫から身を守るために存在しているだけでなく、はるか昔から、皮革の鞣し剤としても重用されてきました。

革製品に使われる動物の生の皮は、そのまま放置を続けると、すぐに腐敗をしていきます。

上記のような状態を防ぐために、原皮を植物タンニン液に長時間浸して、繊維を引き締め、腐敗を防ぎ、より保存が利く状態にするのです。

人気の植物

植物タンニン鞣しという製法が生まれてからは、オーク材やチェストナット(栗)といった、数種類の限られた植物から植物タンニンが採取されていました。

その後は、研究者たちのあらゆる努力によって、世界中の植物から植物タンニンが採取できるようになっています。

現在、一般的に鞣し剤に使われているのは、ケブラチョという南米大陸を中心に自生する木から採取された植物タンニン。

ケブラチョの植物タンニンは、やや赤みがかった色をしており、鞣し剤に用いることによって、温かみのある色の革を作ることができるといわれています。

鞣し剤に使われるタンニンとは?その驚くべき効果について。

植物タンニンを含む植物たち

チェスナット

  • 科名:ブナ科
  • 主産地:ヨーロッパ

栗の木として知られる、チェスナット。

イタリア・フランスをはじめ、ヨーロッパ地域に広く存在しており、日本にも自生しています。

チェスナットは、30年の樹齢を超えると、木質部に植物タンニンを含むようになります。

また、チェスナットから採取した植物タンニンは、収斂性がとても高いのが特徴です。

ケブラチョ

  • 科名:ウルシ科
  • 主産地:南アメリカ

ケブラチョは、アルゼンチンやパラグアイといった南米地域に広く分布する、ウルシ科の木。

硬い芯を持ち、収斂性のある植物タンニンを木質部に豊富に含んでいます。

ケブラチョは生育期間が長いため、ひと昔前は過度な伐採による植物タンニンの採取が問題となっていました。

ただ、現在は積極的な植林によって改善傾向にあるようです。

タラ

  • 科名:ウコギ科
  • 主産地:南アメリカ

タラは、ペルーなどの南米地域に分布する木。

植物タンニンの色は淡く、鞣し剤としてよく使用されています。

オーク

  • 科名:ブナ科
  • 主産地:ヨーロッパ / 北アメリカ

ドングリの実をつけることで知られる、オーク。

オークは主にヨーロッパ地域に自生しており、植物タンニンを樹皮に含んでいます。

オーク材は昔から、建築材や画材として利用されており、われわれ人間の生活に欠かすことのできない木材のひとつとなっています。

ミロバラン

  • 科名:シクンシ科
  • 主産地:東南アジア

赤道付近の東南アジアの熱帯地方に自生する、ミロバラン。

小枝や果実に植物タンニンが含まれています。

ヌルデ

  • 科名:ウルシ科
  • 主産地:東アジア / 東南アジア

ヌルデの若芽と葉には、アブラムシが寄生しやすいという特徴があります。

アブラムシは寄生すると、虫癭(ちゅうえい)と呼ばれる、こぶ状の突起物を作り始めます。

この虫癭には、植物タンニンが豊富に含まれており、虫癭が乾燥したものは、五倍子(ごばいし・ふし)と呼ばれています。

ミモザ(ワットル)

  • 科名:マメ科
  • 主産地:オセアニア / アフリカ

オーストラリアに自生する、ミモザ。

19世紀にかけて、オーストラリアからアフリカに大量に移植がなされ、大規模な栽培が進められました。

約10年という短い期間で成木に育つため、計画的な植林栽培ができる木となっています。

ミモザの樹皮は、約35%が植物タンニンとなっており、その植物タンニンの含有率は、他の植物に比べてとても高くなっています。

脈々と受け継がれる技。植物タンニン鞣しについて解説。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

植物タンニンで鞣された革は、天然素材のみを使用しているため、とても環境に優しい素材として、近年は注目度が高まっています。

気になった方は、ぜひ様々な植物を観察してみてください。

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