植物に含まれるタンニンを用いて皮を鞣すタンニン鞣し。
鞣し剤となるタンニンは、チェスナットやミモザといった樹木から抽出されることがほとんど。
しかし近年は各社のSDGsへの取り組みが活性化していることや、食品ロス問題の解消に向けて、食の副産物に含まれるタンニンを利用した革の研究開発が急速に進んできています。
今回はそんな副産物から生まれる「サステナブルレザー」をご紹介します。
食の副産物を鞣しに使用する意味
皮の鞣しに必要な要素とは
一般的に皮の鞣しに使えるものは、ポリフェノール・色素・油分があるものに限られます。
チェスナットやミモザなどの木々から抽出されたタンニンは、上記3つの要素をバランスよく含んでいることから、鞣しで最も多く使われています。
また、生産量の安定がなければ革の価格も安定しないため、実際には天候などに生産量が影響されにくい樹木のタンニンが使われているのです。
革業界を取り巻く環境
地球環境の変化から、様々な分野でサステナブル製品の開発が進んでいる現在。
消費者の製品と環境に対する意識が変化してきたことで、革業界もそのニーズに合わせた製品づくりが必要になりました。
これまでの大量生産・大量消費を前提とした革づくりから、より環境負担が少ないサステナブルレザーの開発を行う機運がこのようなかたちで増してきたのです。
積極的な研究開発とその目的
食の生産者側も同じような理由によって、生産過程で生まれた副産物(廃棄物)の有効活用方法を模索する業者が増加しました。
“環境への負荷を減らしたい”という気持ちが両者を結び付け、食の副産物を使った革づくりが進められることになったのです。
食の副産物から生まれたサステナブルレザーをご紹介
ここからは実際に食の副産物を使って作られた革をご紹介します。
すでに市場に流通しているものと、現在研究開発の段階にあるものをご紹介します。
すでに流通しているサステナブルレザー
お茶
飲料メーカーと協力して生まれる大量のお茶殻で鞣された革。
日本ならではの革ともいえます。
色は深みのある緑色。
和をイメージさせる色合いと風合いがとても魅力的です。
藍
世界各地で存在する藍染は、古来から革の染色に使われています。
藍染めの原料である藍草は、染色が堅牢度が高いのが特徴。
藍染でしか作り上げることのできない模様のある革も存在します。
ワイン
タンニンを豊富に含むワインの搾りかすを再利用した革。
ワインに含まれる色素が美しい赤色を生み出します。
ポリフェノールも豊富で、革にしなやかさを与えています。
現在研究開発が進められているサステナブルレザー
コーヒー
全世界で大量に消費されるコーヒー豆。
コーヒー豆は鞣しに必要なポリフェノールの含有率がとても高いのが特徴です。
現在は焙煎し終えた豆を使った革の開発も進んでいるのだそう。
香りはどんなものになるのか、とても気になりますね。
もみ殻
日本人の主食であるお米。
もみ殻から採取した油分を活かした革は、豊潤な艶感としなやかさが特徴です。
近く製品化するとの情報もあります。
柿渋
タンニンを多く含む渋柿。
渋柿はタンニン鞣し革と同じように、陽に当てることによって色を変えるます。
同じメカニズムでエイジングが起こる渋柿を使って革を鞣すことは、もはや必然なのかもしれません。
柑橘
革がとてもに爽やかな色に染まるといわれる柑橘類。
こちらもタンニンを多く含んでいるので、革の鞣しに使用できるかの研究が進んでいるそうです。
今までの革にはない、涼しげな色の革が作れそうですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は様々な食の副産物で鞣されたサステナブルレザーをご紹介しました。
皮を鞣すには、高い技術力と供給の安定性が欠かせません。
製品化せずとも、こういった製品の開発実験によって新たな技術分野が誕生することはこれからの時代において素晴らしいことだと思います。
これからどんな副産物を使った新しい革が生まれてくるのか、とても楽しみですね。