イタリアが世界に誇る革、イタリアンレザー。
イタリアの卓越した鞣し技術によって生まれた革は、日本をはじめ世界中の人々に愛され続けています。
この記事では、世界三大レザーのひとつ“イタリアンレザー”の特徴と魅力を、イタリアの歴史を交えながら解説します。
イタリアンレザーとは?
イタリアンレザーとは、イタリア国内で生産された牛革のことをいいます。
イタリアの名産品と聞いて、イタリアンレザーがまず思い浮かぶという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
イタリアンレザーの生産量はあまり多くはなく、生産量は世界で16位となっていますが、イタリアの鞣し技術は、他国を凌駕していることに間違いはなく、その品質のよさから、ブライドルレザー・コードバンと並ぶ、“世界三大レザー”のひとつに数えられています。
また、イタリアのトスカーナ州は、はるか昔から皮革産業が盛んな土地として知られ、イタリアを訪れる沢山の観光客に人気となっています。
歴史
ローマ帝国の繁栄によって生まれた新たな産業
紀元前753年に誕生したとされる、都市国家のローマ帝国。
ローマ帝国は他国に比べ、かなりはやい時期に皮革製品の流通を本格化させたといわれています。
その理由には、イタリアの周辺地域をはじめ、ヨーロッパの広範囲を武力によって植民地化したことが関係しています。
当時、ローマ帝国軍の強大な軍事力は、ローマ市民から構成される、重装備の歩兵が中枢を担っていました。
基本的な装備には、靴(ガリガ)や盾(パルマ)といった軍用品があり、これらの装備品を作るのに大量の革が使われました。
このような理由から、ローマ帝国の繁栄は国内の皮革産業の成長に大きく寄与しており、すでにローマの街にはいくつかの革屋が存在していたともいわれています。
ルネサンス時代がもたらした装飾の技術
数え切れないほどの芸術作品が生まれた、ルネサンスの時代。
あらゆる産業が華やかさを極めた時代に、芸術の都として知られるトスカーナ州に革づくりが普及します。
当時の政府が国の威厳をかけて美術界を支援したことで、フィレンツェなどの都市では、金銀の装飾技術、鮮やかな色を使った彩色技術、型押しなどの加工技術が急速な進歩をみせました。
イタリアンレザーの代名詞ともいえる、植物タンニン鞣しが生まれたのもこの時代。
イタリアの豊かな土壌で育った木々から採取された植物タンニンを使ったこの鞣し製法は、鞣しに時間と手間がかかるものの、耐久性のある革を作ることのできる製法として、トスカーナ州に浸透していきました。
第二次世界大戦後の需要拡大
イギリスの産業革命によって、イタリアの皮革産業にも大きな変化が生まれます。
それまでは限られた範囲にしか輸出されていなかったイタリアの革製品は、生産数を増やすことができるようになったことで、全世界に輸出されるようになりました。
また、第一次世界大戦・第二次世界大戦後におきた国内経済の急成長によって、イタリアの皮革産業も急速な復興を遂げました。
特徴
地域の特性を活かして
イタリア国内には、“タンナー”と呼ばれる、鞣しを行う工場がいくつもあります。
その特徴は、タンナーが手掛ける素材が地域によって異なっている点。
ロンバルディア州では、革靴に用いられる、牛革・羊革・山羊革の生産、その隣に位置するヴェネト州では、家具に用いられるの革の生産が盛んとなっています。
また、トスカーナ州のピサ県にある、アルノ川周辺は“皮革の首都”と呼ばれ、世界的な皮革の産地になっています。
昔から農業従事者が大きな割合を占めたこの地域の人々は、生活環境の苦しさから逃れるために、鍛冶屋や左官屋などを兼業する人がほとんどでした。
そのひとつとして、皮革産業を兼業する者が増えたことから、戦後の革製品の需要拡大を追い風に、アルノ川一帯にタンナーが次々と生まれていきました。
豊かな土壌がつくる革
ヨーロッパの広大な土地でのびのびと育つ牛は、とても良質な原皮となり、美しい表情を持った革となります。
また、鞣し剤に用いられる植物タンニンは、イタリア国内のチェスナットやミモザといった植物から採取されています。
イタリアには、上記のような植物タンニンを豊富に含む木々が育ちやすい、豊かな土壌が全国に広がっています。
とくに、地中海周辺の間帯土壌(テラロッサ)は、植物の栽培にとても適しており、その土壌で育った木々から採れる植物タンニンは、世界最高品質と評されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
イタリアンレザーの質のよさは、使ってみることで味わうことができます。
気になった方はぜひ各店舗にて、イタリアンレザーに触れてみてください。