
皮革製品の原料皮となっているのは、動物から剥いだ皮。
そのまま放置をしておくと、急速に腐敗と硬化が起きて、皮革製品用の素材として利用することができません。
そんな原料皮の保存性を高めるための基本作業を、鞣し(なめし)といいます。
この記事では、鞣しについて解説します。
鞣しとは?
鞣し(なめし)とは、動物から剥いだ皮を、乾燥や湿度による腐敗や硬化から防ぐために施される、化学的、物理的作業のこと。
本来、皮革素材の主な成分は、コラーゲンと呼ばれる“たんぱく質”。
わたしたちの皮や骨にも含まれている「コラーゲン」は、比較的簡単に変質するという性質があります。
たとえば、動物の骨を煮ると「ゼラチン」が作られるように、ゆっくりと構造が変化していきます。
そんな変性しやすい性質を変えて、コラーゲンを安定させるのが、鞣しを行う最大の目的です。
コラーゲンが一度安定すると、外的要因の影響を受けにくくなり、硬化や収縮をすることがなくなって、柔軟性が長く保たれます。
最終的な目的は、耐熱性の付与、抵抗性の付与、化学的特性の付与と言い換えることもできます。
そして、動物から採取される“皮”は、この鞣しを経ると、“革”になるのです。
鞣しの歴史
化学物質が存在しなかった頃には、手作業で揉み込むなどして、物理的に柔らかくする方法があったようです。
また、原料皮を燻煙する、長時間清流に漬けるなどする方法もありました。
鞣剤の種類
コラーゲンを安定化させる物質を「鞣剤」といいます。
鉱物性のものと、植物性のものがあり、それぞれ原料皮は同じでも、どのような鞣剤を使用するかによって、素材の性質に違いが生まれます。
また、コラーゲンの安定性を示す指標に、熱収縮温度があります。
熱収縮温度とは、コラーゲンが収縮する温度のことで、一般的に温度が高ければ高いほど、しっかりと鞣されていると考えることができます。
クロム
クロム(塩基性硫酸クロム)を含む、鞣剤。
クロムは、鞣し時間がとても短く、生産管理や工程管理が容易となります。
また、非常に安価な鞣剤であるものの、耐熱性を最も与えることができるほか、柔軟性、発色性にも優れています。
そのため、クロム鞣しされた製品の割合は、年々増加をしており、いまや全体9割を占めています。
ただ、クロム鞣剤だけでは生み出すことのできない性質などもあるため、そのほかの鞣剤と組み合わせて使われることもあります。
タンニン
ケブラチョ・ミモザ・チェストナットなどの植物に含まれる、植物性タンニンを使った鞣しのこと。
コンビネーション鞣し
混合鞣しとも呼ばれ、クロム鞣しとタンニン鞣しを掛け合わせたものなど、複数の鞣し剤を併用する製法のこと。
いくつかの特性を与えることができるため、市場からの要望に沿った革づくりがしやすいため、近年はその重要性が高まっている。
油鞣し
アルデヒドを含む鞣し剤を使用する、複合鞣しのこと。
鞣しの工程
鞣しには、鞣す前の“準備”から、鞣したあとの“仕上げ”まで、複数の工程が存在します。
また、これらの工程は、皮革の種類、土地、環境、こだわりによって、数に違いがあることも特徴です。
準備工程
水漬け
革製品の原料となる“原皮”は、国内外の屠畜場から輸送されてきます。
とくに海外からの原皮は、輸送中に腐敗が進まないように、大量の塩に漬け込み、乾燥させて水分をあらかじめ抜かれた状態にされています。
上記のような原皮に付着している塩、血液などの頑固な汚れを落とし、最後に水分を補い、清潔な生皮の状態に戻していきます。
裏打ち
裏打機(フレッシングマシン)と呼ばれる特殊な機械を用いて、余分な脂肪と肉片を除去します。
石灰漬け
清潔になった皮を、石灰乳に浸漬させます。
石灰乳に革を浸すことで、液中に含まれる強アルカリ性の効果によって毛穴が膨らみ、毛が抜けやすくなります。
また、石灰漬けをすることにより、柔軟性を与えることができます。
分割
分割機(スプリッティング)を使って、決められた厚さに皮を銀面と床側の二層に分割します。
垢だし
石灰漬けで除去しきれなかった毛根を取り除くなどして、銀面の見栄えを整えます。
再石灰漬け
さらに素材を柔らかくする必要がある場合には、石灰乳に再度浸します。
脱灰
石灰漬けによって付着した石灰を丁寧に取り除きます。
上記によって、鞣し剤を浸透しやすくさせることができるようになります。
酵解
酵解(ベーチング)をすることにより、不要なたんぱく質を除去して、表面を滑らかにします。
鞣し工程
浸酸
さらに均一に鞣し剤が浸透するように、酸性溶液に皮を浸しておきます。
クロム鞣し
クロム鞣しを施して、耐熱性と耐久性を与える。
水絞り
余分な水分を機械を使って、絞り出します。
裏削り
シェービングマシンという機械を使い、適当な厚さに調整します。
その状態と品質によって、等級が付けられます。
再鞣
使用目的に合わせた素材にするため、各鞣し剤を用いて、独自の特性を与える。
染色・加脂工程
中和
アルカリを使い中和させ、染料が均等に浸透するようにしておきます。
染色
染料を使って、色を染めていきます。
加脂
精製された生油と合成油脂を含ませて、柔軟性を与えます。
水絞り
サミングと呼ばれる専用の機械を使って、余分な水分を抜き、全体を伸ばします。
仕上げ工程
乾燥
仕上げを行う前に、自然乾燥または熱乾燥をさせて、染料を定着させておきます。
味入れ
水分を適度に含ませて、柔軟性を与えます。
ステーキング
ステーキングマシンと呼ばれる機械を使って、皮をほぐし、柔軟性と弾力性を与えます。
乾燥
皮を平らな状態にして、水分を抜いて乾燥させます。
仕上げ
価値のない縁の裁断をはじめ、銀面を塗装、艶出し、アイロン、型押しなどを行う。
計量
最終的な革の面積を計り、価格を付ける。
取引の単位は、“デシ”と呼ばれ、10cm×10cmが1デシとして計算されます。
ただ、上記の単位は日本独自のものとなっており、その他の国々では“スクエアフィート”という単位がよく使われています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
鞣しの種類を知れば、革製品の品質や特徴を判断するのにとても役立ちます。
また、アレルギーを持っている方は、鞣し剤に何が使われているかを確認することが大切です。
