顔料、染料・・・

どちらもなんとなく聞いたことはあるけれど、2つの違いってなんだっけ??

こんなふうに聞いたことはあるけれど、よく知らないことって多いですよね。

顔料と染料は革の色のつけ方や革の仕上げ方法のことです。

実は、どちらの着色方法を使うかによって、革の風合いはかなり変わってくるんですね。

今回はそんな、革の雰囲気をガラリと変える色のつけ方 “顔料と染料” について解説します。

顔料とは?実は古代から使われていた着色方法。

まずは顔料について解説していきます。

顔料とは、製品の着色に使用される粉末状の物体です。
革製品以外にも、プラスチック製品や化粧品、食品とさまざまなものに使用されています。

顔料には、水や溶剤に溶けないという性質があり、
このままの状態では製品に色をつけることができません。

そのため、バインダーと呼ばれる定着剤と混ぜ合わせて、
製品に色を塗れるように変化させてから使用します。

定着剤という言葉からもイメージできるように、顔料は製品の表面上に色を定着させるもの。

分かりやすい例でいうと、ペンキや絵具のようなものと考えていただけるとよいでしょう。


顔料を使った革

なので、素材の繊維までは色は入らず、あくまでも表面上に色が塗られただけの状態と言えます。
また、顔料には天然の素材(土や植物、鉱石など)が原料となっている無機顔料と、合成された有機顔料の2種類が存在します。

前者は素材を生かした素朴な色味が多く、後者は鮮やかな色味が多いのが特徴です。

では、顔料にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

まず、顔料の一番のメリットは、「色落ち、色移りがしにくい」
つまりは周りの環境に左右されず、経年変化しにくいという点があります。

これを証明するものの中に、数万年ほど前に描かれたとされる先史の壁画があります。

フランスの洞窟で見つかったこの壁画には、
当時存在した天然の土や鉱石を使った無機顔料が使われていたことが近年の研究で分かっています。
この壁画が良好な状態で今でも現存していることを考えると、顔料の耐久性の強さがお分かりいただけると思います。

もちろん顔料にはデメリットも存在します。

特に革製品のような手触りが一つ一つ異なる素材は、表面が顔料で覆われると、
自然な手触りは失われ、表情に本来の革らしさを見ることはできません。

また、経年変化も起きずらい為、光沢や色の変化はありません。

革製品に顔料を使用することで、革の持つ“透明感“”は失われてしまいますが、
天然のキズや風合いのまったくない、均一な着色ができる仕上げ方法となっています。

染料とは?革らしさを引き立たせる加工。

染料も顔料と同じく、色を染めるための色材のひとつで、
顔料とは大きく違い、水と溶剤によく溶ける性質を持っています。

なので、表面上だけでなく、製品の繊維の中にまで色が浸透し、染めあげることができます。
着色性も非常に高いため、顔料に比べて小さな傷でも色が剥げにくくなっています。

また、様々な色を混ぜ合わせて、新たな色をつくることが可能なため、
色の再現性が非常に高く、自然な発色の良さも特徴となっています。

表面は素の状態に近い仕上がりになるため、
本来の手触りや見た目が失われず、最後まで革らしさの残る仕上がりとなります。

革の部位によっては、革らしい天然の皺やトラ(筋)といった、革特有の表情を見つけることもできます。

もちろん、染料にもデメリットは存在します。

それは、湿度や摩擦が起こると、色落ちと色移りが起こる危険性がある点です。
また、経年変化が楽しめる分、簡単なお手入れが必要になります。

革の色落ち・色移りの原因と予防策。

顔料は厚化粧。染料はナチュラルメイク。

ここまで読んでいただければ、顔料と染料の違いがお分かりいただけたと思います。


顔料は水や溶剤に溶けない性質で、あくまでも表面上に色をつけるもの。

染料は水や溶剤に溶け、繊維の中にまで染み込んで色がつくんですね。

それでは、分かりやすく、
顔料と染料のメリットとデメリットをまとめたものを見ていきましょう。

顔料  ~均一された表情の革が好きな方におすすめ~

メリット
・色落ち、色移りがしにくい
・水につよい
・光にさらされても色褪せがしにくい

デメリット
・自然な手触りはない
・表情に革らしさはない
・経年変化がしにくい
・傷が付いてしまうと元の状態に戻しにくい
・一部有害物質が含まれている可能性がある※革製品以外を含む。

染料 ~革の風合いが好きな方におすすめ~

メリット
・手触りと見た目に革らしさがある
・革製品の醍醐味である「経年変化」を楽しむことができる
・天然の皺やトラといった、革本来の素材感がある

デメリット
・色落ち、色移りがある
・お手入れが必要となる
・顔料に比べて高価になる

この他にもそれぞれに特徴はありますが、実際に気になる製品がどちらの方法で着色されているかを調べ、その製品の雰囲気が自分の好みに合うかどうかを知るのも良いでしょう。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?

同じ動物の皮でも、着色方法によって、最終的な革のイメージが全く異なることがお分かりいただけたと思います。

もしこのコラムを読んでくださっているあなたが本当に革がお好きな方なのであれば、
おすすめは染料仕上げされた革になります。

染料仕上げされた革は、お手入れが必要ですが、
経年変化を楽しむことができ、愛着を抱いて革製品を使うことができるでしょう。

また、他分野のお話ではありますが、書の世界でも顔料と染料の違いを感じることがあるそうです。

例えば筆ペンは、インクが顔料か染料かによって書き味が変わります。

顔料は速乾性による実用性があり、染料は文字にプロが求める深い味わいを生み出すのが特徴とされています。

こんなところにも違いが生まれるのですね!

sotでは染料仕上げされた、革らしい製品を取り扱っています。

染料仕上げの革ならではの、「革本来の風合い」をお楽しみください。

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