鞣しの最終工程となる、仕上げ。
仕上げによって、質素な表情の革に個性が生まれ、特徴や質感が大きく変化します。
この記事では、そんな仕上げの種類と特徴について解説します。
仕上げとは?
フィニッシングとも呼ばれる、仕上げ。
仕上げは、原皮が革製品として使えるような素材になるまでの鞣しの最終工程となり、素材の価値と特徴を左右する、とても重要な工程となっています。
仕上げには、塗装作業・着色作業・機械作業などがあり、表面の保護に加えて、着色による風合いの特性を与えるものなどに分類することができます。
人の肌に触れる革製品は、風合いの独自性が強く求められるため、この仕上げにおける感性がとても重要視されています。
仕上げでなにが変わる?
仕上げを行う理由には、防水性・柔軟性・撥水性などの特性を与えて、耐久性のある素材にすること、風合いや模様を作り出し、見た目を美しくすることなどがあります。
動物の体を覆っていた原皮は、天然素材であるが故に革の表面には、天然の傷などがついています。
そのような傷を仕上げによって隠すことで、均一性のある革を作ることができます。
また、ファッショントレンドの影響によって、新たな仕上げ方法が次々と生み出され、仕上げのなかには表面に型を押して、他の種類の革に見せる加工、ファッション性のある光沢感を持たせる加工なども存在します。
仕上げの種類と特徴について
透明感を与える仕上げ
アニリン仕上げ
表面に着色をすることによって、表面を保護して、美観を高めることを目的とした仕上げ。
銀面にある個性的な表情を活かしながら、タンパク質のバインダーを配合した仕上げ液(染料)を塗布していきます。
透明感を与える仕上げ方法のうち、もっとも透明度を高くすることができ、銀付き革の仕上げによく採用されています。
絶妙な光沢感があるのが特徴となるものの、塗膜の強度は低いため、慎重に管理する必要があります。
セミアニリン仕上げ
アニリン仕上げとカバリング仕上げを合わせた仕上げのこと。
銀面に残る傷を、有機顔料と染料といった着色剤を使い分けて隠しつつ、ある程度の模様を残すことができます。
カバリング仕上げ
着色剤として、主に無機系顔料を用いた仕上げ方法。
表面にみられる傷やムラをより目立たなくすることができます。
透明度は低いものの、鮮やかな色をつけることができるのが特徴です。
塗装される仕上げ
カゼイン仕上げ
天然物系のカゼインを主成分にして、タンパク質系染料とワックスを配合した塗料を塗布したのち、光沢を出していく方法。
銀面の表情を美しく生かすことができるほか、耐水性と堅牢性を与えることができる。
バインダー仕上げ
水性ポリマー仕上げとも呼ばれる。
合成樹脂バインダーを使用して、表面に塗装を施して塗膜を形成する仕上げ方法。
ラッカー仕上げ
硝化綿を用いた仕上げ剤を使って、塗膜を形成する仕上げ。
艶感などを自由自在に付け加えることができる。
ポリウレタン仕上げ
反応性ポリウレタン・非反応性ポリウレタン・ポリウレタンエマルジョンを用いて、耐久性のある超強力な塗膜を形成する仕上げ。
水性ウレタン仕上げ
耐水性と耐摩耗性に優れる。
マシンによる仕上げ
グレージング仕上げ
グレージングマシンと呼ばれる特殊な機械を使った仕上げ。
仕上げ剤で塗装した銀面を、ガラス、瑪瑙(めのう)などを使って摩擦を加えて、圧と熱によって光沢を出したり、表面をより緻密にします。
アイロン(プレス)仕上げ
すべての仕上げのなかで、もっとも利用されている仕上げ方法。
グレージング仕上げと同様に、仕上げ剤で塗装した銀面をアイロンプレスして、艶出しがされる。
外観にこだわった仕上げ
エナメル(パテント)仕上げ
バフィングした表面に、ポリウレタン樹脂を塗布して、厚膜を作り出す仕上げ。
アメリカの皮革製造業者によって生まれた仕上げ方法であり、比較的簡素な方法であるために、大量生産向けの革製品によく使用される。
ただ、気温の変化に対して、とても弱いという一面があり、表面の樹脂が溶けてしまったり、ひび割れを起こす恐れがあります。
オイル仕上げ
グリース、動物性の油を用いて、オイル感のある表面に仕上げる方法。
主に、登山靴などの製品に使われており、滑らかな手触りが感じられるのが特徴です。
バニシング仕上げ
バフによる熱によって、表面を焦がしたようにする仕上げ。
アドバン仕上げ
ブラッシュ、オフ仕上げとも呼ばれる。
濃い暗色の塗装を施して、不規則な色調の濃淡を作り、表面に立体感をもたせる仕上げ。
アンティーク仕上げ
アンティーク調の色調をつけて、古風な仕上がりにする方法。
補色クリームを使って、アンティーク調に仕上げる方法もあります。
ツートン仕上げ
型押しされた革の仕上げに使われる仕上げ。
色調に濃淡をつけて、表面にある凹凸感をより際立たせる。
プリント仕上げ
表面に模様をつける仕上げ。
パール仕上げ
天然の魚鱗、鉱石の一種である雲母を基材にしたものを加えた液を吹きかけて、光沢を出す仕上げ。
光の反射によって、真珠のように美しい輝きが生まれます。
メタリック仕上げ
金属のような光沢を出す、仕上げ方法。
一般的には、パーティー用のベルトなどに使われています。
フィルム仕上げ
フィルムを表面に層板する仕上げ。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
仕上げの種類は、20種類以上にのぼります。
ぜひ、革製品を見かけた際には、仕上げによる表情の違いに注目してみてください。