東京都の日本橋にある日本銀行。
江戸時代から金座(きんざ)と呼ばれるこの地で、数十年に一度の頻度で新紙幣(銀行券)を発行してきました。
そして令和時代に入って、はじめての新紙幣の発行が予定されています。
この記事では、そんな新紙幣について詳しく解説します。
新紙幣発行の理由とは?
流通量は毎年増えている
近年、クレジットカードなどを使ったキャッシュレス決済が増えるなか、じつは毎年のように流通する紙幣の数は増加しています。
よく新紙幣の発行については「キャッシュレス化を遅らせる。」などの意見がありますが、上記のようなデータをみると、紙幣の重要性はまだまだ高いといえるでしょう。
紙幣の価値を保つために
日本銀行では、経常的に新紙幣を発行しています。
その主な目的は、紙幣の偽造を防止すること。
過去の技術を使ったものを長きにわたって流通させてしまうと、紙幣が偽造されやすくなり、紙幣の価値が低下する恐れがあります。
上記のような理由から、約20年に1回ほどの頻度で新しい紙幣が発行されているのです。
新紙幣を大解剖!
世界初の技術
新紙幣には、ホログラムなどの偽造防止技術が数多く使われています。
新搭載のホログラムは、紙幣の傾け具合によって、三次元の肖像などの図柄が回転します。
また、ホログラムと同じように、世界初の搭載となるのが、高精細の「すき入れ」。
高精細のすき入れ模様を中央部のすかしに加えることで、より強固な対策が施されています。
どんな人でも扱いやすい
新紙幣の額面は従来のものに比べて大きくなり、より認識しやすくなります。
さらに、紙幣を触るだけで券種が区別できる判別用のマークが、券種毎に違う位置に新しく配置されます。
判別用のマークは11本の斜線で構成されており、視覚障害を持つ方が容易に使えるようになっています。
上記のような判別用のマークをはじめ、右側の肖像と額面には、インキを重ねて凹凸感を出す、深凹版印刷(ふかおうはんいんさつ)”と呼ばれる技術が使われています。
また、用紙はみつまたなどの植物を使って、伝統的な和紙によく似せて作っているため、かなり独特な手触りが感じられるようになっています。
人物・図柄
壱万円札
表面:渋沢栄一(しぶさわえいいち)
日本初の銀行をつくった人物。
生涯を終えるまでに設立した会社は数百に上り、実業家として活躍しました。
裏面:東京駅
辰野金吾が設計した明治時代を代表する建造物。
五千円札
表面:津田梅子(つだうめこ)
現在の津田塾大学にあたる、女子英学塾の創始者。
明治時代に派遣された岩倉使節団に随行した最年少の女子留学生として知られ、すべての女性が平等に近代的な教育を受けられるようにするなど、それまで低かった女性の地位向上に尽力しました。
裏面:藤
万葉集に登場するなど、日本人ぶ広く親しまれる花。
千円札
表面:北里柴三郎(きたさとしばさぶろう)
日本初の医学研究所をつくった人物。
故郷のある熊本を離れて東京医学校に入学、世界初となる破傷風に有効な療法を確立させました。
そのほか、ペスト菌を見つけるなどの偉大なる功績を収めています。
また、私立伝染病研究所と私立北里研究所を創設したのち、新薬の研究に力を注ぎながら、後進らの教育にも取り組みました。
裏面:富獄三十六景
世界的に知られる葛飾北斎の代表作。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
約20年ぶりとなる新紙幣の発行。
新紙幣には、美しい図柄と偉大なる人物が描かれているだけでなく、偽造を防ぐための技術が数多く盛り込まれています。
新紙幣に触れる機会があれば、時間をかけてゆっくりと観察してみるとよいかもしれません。
リンク:国立印刷局