新紙幣が発行される度に話題となるのが、新紙幣の肖像となる人物のこと。
名誉ある肖像に選ばれる人物は、どのような選択基準によって選ばれ、決定されるのか。
この記事では、日本円の歴史のなかで、紙幣の肖像に選ばれた歴代の人物について解説します。
どのように肖像となる人物は決められる?
新紙幣発行の際、その紙幣の肖像と図柄については、財務省、日本銀行、国立印刷局の三者が協議をして、財務大臣が最終決定をするということが、日本銀行法に規定されています。
ただ、気になるのは、“どのような人物が、どのようにして選ばれているのか”ということ。
明確な基準こそないとされていますが、“おおまかな基準”といえるようなものはあるそうです。
- 名前が広く知られている。
- よく知られた功績、作品がある。
- 国民の模範となるような、有徳といえる人。
- 肖像写真、肖像画がある、また精密であること。
架空の人物が選ばれたことも・・・
これまでの肖像に選ばれた人物を振り返ってみると、面白いことに架空の人物が選ばれたこともありました。
一円券(昭和発行開始分)の肖像となったのは、大和時代の伝説上の人物、武内宿禰(たけうちのすくね)。
また、七福神の大黒天は「日本銀行兌換銀券」の肖像として描かれました。
歴代の人物
伊藤博文(いとうひろぶみ)
山口県(長州藩)の農家の生まれ。
教育者、思想家の吉田松陰に学び、高杉晋作、木戸孝允らと、尊王攘夷運動に参加する。
ロンドン留学生として渡英、近代政治制度を学び、帰国後は、討幕派の武士としての活躍が認められ、新政府の官僚に就任。
初代内閣総理大臣として、「大日本帝国憲法」の制定をするなど、日本国の近代化に貢献しました。
板垣退助(いたがきたいすけ)
自由民権運動の主導者として活躍した、明治期の政治家。
高知県(土佐藩)に生まれ、土佐藩の武士として、尊王攘夷運動に参加する。
戊辰戦争では、官軍参謀の司令官として活躍、新政府成立に貢献した。
その後、自由民権運動を主導していきました。
有名な言葉に、「板垣死すとも自由は死せず」。
岩倉具視(いわくらともみ)
江戸期~明治期にかけて活躍した、幕末期の政治家。
公家の出身ながら、天皇の世話をする立場となる。
尊王攘夷運動にも関わり、討幕派として活動。
また、岩倉使節団の一員として渡欧したのち、近代化政策を後押しするなど、近代国家形成に、大きな役割を果たしました。
聖徳太子(しょうとくたいし)
飛鳥期を代表する皇族のひとり。
推古天皇の皇太子となり、「冠位十二階」「十七条憲法」などを制定。
また、幼少期よりとても明敏な子であったとされ、よく知られている逸話のひとつに、“同時に十人の話を聞けた”という話がある。
紙幣の歴史を振り返ると、いくつかの紙幣の肖像に選ばれています。
高橋是清(たかはしこれきよ)
明治期から昭和期にかけての政治家。
アメリカ留学を仙台藩の命により受けたものの、奴隷と間違えられるなど、特殊な経験を現地で味わった。
日本銀行に入行後、日銀副総裁、日銀総裁を歴任するなどした。
大黒天(だいこくてん)
七福神の一柱。
財福、豊穣、商売繁盛の神として、いまなお信仰される。
藤原鎌足(ふじわらのかまたり)
飛鳥期の豪族。
「大化の改新」を成して、中央集権体制の基礎を整備した。
菅原道真(すがわらのみちざね)
右大臣まで昇進した、平安期の詩人。
現在は、学問の神、学業成就の象徴として知られる。
和気清麻呂
奈良期~平安期の政治家。
天皇に仕え、右大臣、太政大臣となる。
遣唐使の派遣に関わった。
武内宿禰(たけのうちのすくね)
日本の神話、『古事記』『日本書紀』に登場する、伝説の人物。
数代の天皇に仕えたといわれる。
日本武尊(やまとたけるのみこと)
伝説的な英雄として、『古事記』『日本書紀』に登場する。
神功皇后(じんぐうこうごう)
古代日本の伝説的な皇后。
仲哀天皇の后。
夏目漱石(なつめそうせき)
明治期の作家。
教授職を経て、朝日新聞の作家となる。
『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『草枕』『こころ』『それから』『門』などといった作品が人気を集めた。
新渡戸稲造(にとべいなぞう)
明治期~昭和期の教育者。
アメリカ、スコットランドへの留学を経験。
教育者、思想家として活躍したのち、国際連盟事務局次長となる。
精神論を記した『武士道』は、国際的に高い評価を受けている。
二宮尊徳(にのみやそんとく)
江戸期の農政家。
千葉県の裕福な農家に生まれ。
かねてから病弱であった親の代わりに、よく働いたといわれる。
その姿勢を表した「二宮金次郎像」は、全国各地の学校に設置されるなどして、その名が広く知られるようになった。
江戸末期には、「報徳思想」を唱えました。
野口英世(のぐちひでよ)
福島県の農家生まれ。
左手指に傷を負い、農家になることを諦めなければならなくなる。
その手術を受ける際、医療の凄さを目の当たりにしたことで、医学の道に進むことを決める。
世界の国々を渡り歩きながら、伝染病の研究に勤しむ。
それまで不治の病であった「黄熱病」の原因究明により、国際的に高く評価された。
樋口一葉(ひぐちいちよう)
明治期の作家。
幼い頃より、家計を助けるために本を書きはじめる。
『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』などがある。
福沢諭吉(ふくざわゆきち)
渡米渡欧を通じ、西洋文明を体験する。
慶應義塾を創設、近代日本の教育と人材の育成に尽力。
ベストセラー作品には、『学問のすゝめ』がある。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
紙幣の肖像となった、歴史上の偉人たち。
紙幣のを使う際には、その人物の人生に思いを馳せてみるものよいかもしれません。