生の「皮」から素材の「革」へと変える鞣し(なめし)の加工。

あなたが普段見る革のほとんどは、クロムという成分を使う「クロム鞣し」と、タンニンという成分を使う「タンニン鞣し」のどちらかの方法でつくられています。

前々回の記事では、クロムとタンニンの性質の違いから、どちらがあなたに合う革になるのかを、

そして、前回の記事ではタンニンの中でもどのようなタンニンを選ぶと好みの変化をしてくれるのかをご説明しました。

実は、そんなクロムやタンニンを使って皮を「どのようになめすか」によっても、できあがる革の風合いは左右されるんです。

今回は、そんな「なめし方」に注目して、どのようになめされた革があなたにとって”良い革”なのかをご説明していきます。

ぜひ今回の内容を革製品選びの参考にしてみてください。

目次
①「なめし方」に注目した失敗しない革製品の選び方
・やわらかさを求める人はどちらのなめし方の革がおすすめか
・密度の詰まったハリがある革が好きな人にはどちらのなめし方がおすすめか
②sotのメインレザーの鞣し方を全て公開します。

「なめし方」に注目した失敗しない革製品の選び方

クロムやタンニンといったなめしに使われる成分だけを見て革を判断していないですか?

実は革の風合いにも大きく関わってくる「なめし方」について、詳しくご説明していこうと思います。

革のなめし方には大きく分けて2つあります。

それが「ドラム鞣し」と「ピット鞣し」です。

世の中に流通している革のほとんどがクロムとタンニンを使ってなめされているので、その組み合わせを挙げると、

  • クロムを使ったドラム鞣し
  • クロムを使ったピット鞣し
  • タンニンを使ったドラム鞣し
  • タンニンを使ったピット鞣し

の4パターンがあります。

※詳しく言うと、クロムとタンニンの両方でなめす方法(混合鞣し)もあるので、それぞれの後にもう2パターンずつプラスで、組み合わせ上の合計は8パターンになります。

あなたが、普段手にする革はほぼ全て、このいずれかの組み合わせでなめされているんです。

クロムとタンニンによる革の違いは以前の記事をご覧頂くとして、今回はこの2つの「なめし方」について詳しく見ていこうと思います。

やわらかさを求める人はどちらのなめし方の革がおすすめか

革に求める風合いは人それぞれだと思います。

肉厚でがっしりとした風合いが好きな方。

適度なハリがあってスムースな風合いが好きな方。

シボが立ってふっくらとした風合いが好きな方。

ここでは、「ハリの強い革」よりも「程よいやわらかさのある革」がお好きな方にとって、どちらのなめし方の革を選んだ方が良いのかをご説明していきます。

結論から言うと、そんな方には「ドラム鞣し」の革がおすすめです。

ドラム鞣しとは、「タイコ」とも呼ばれるバスケットゴールほどの高さの大きなドラムを使って革をなめす方法のこと。

ドラムの中に、皮とクロムやタンニンを一緒に入れてぐるぐると回しながら、1~3日ほどかけて繊維になめし剤を染み込ませていきます。

この方法は、ドラムの中で革を回転させながら、効率的に鞣し剤を染み込ませられるのがメリット。

その過程で、革の繊維も程よくほぐれていきます。

大体の革はこの鞣し方でつくられており、革製品を購入される際、特になめし方が明記されていなければドラム鞣しだと思って良いと思います。

しかし、ドラム鞣しだからと言って、硬くハリのある革がないわけではないので注意してください。

例えば、なめしの後(または最中)には、革の柔軟性を出しながら乾燥を防いでくれるオイルを入れますが、その量を少なめにすれば、たっぷりオイルを入れているものに比べて、ハリのある革に仕上がります。

また、仕上げに特殊なアイロンでシワを伸ばしたり、均一な模様をつける型押しなどの加工をすれば、熱と圧力によって繊維が引き締まり、ハリが出ます。

なのであくまで、他の条件を同じにした場合に、ドラム鞣しの方がやわらかく仕上がる、と考えてくださいね。

密度の詰まったハリがある革が好きな人にはどちらのなめし方がおすすめか

革の自然な柔らかさを出すドラム鞣しに対して、ピット鞣しは繊維の詰まったハリのある革をつくることができます。

そもそもピット鞣しとは、「pit(地面の穴)」という英語から来ており、地面を掘ってつくる小さいプールのような槽(ピット槽)をつかうなめし方。

この槽に、植物から抽出したタンニンを入れた液を入れ、その中に皮を漬け込むことで革へと鞣します。

こうすることで繊維がほぐれることはなく、タンパク質と結合してぎゅっと密度を詰めるタンニンの性質(収れん性)が、じっくりと働きます。

通常の革製品用のレザーで数十日、革靴のソールに使われる高級レザーともなれば、約1年もの間タンニンの液に漬け込まれます。

これによって、繊維の中までしっかりとタンニンが染み渡り、革の奥の奥まで強固に結合。

ぎっしりと繊維の詰まった丈夫な革に仕上がるんです。

日本でこの鞣し方ができるタンナー(皮を革になめす会社)は両手に収まるほどしかなく、兵庫県の株式会社山陽 や、栃木県の栃木レザー株式会社などが有名。

※ピット鞣しをするタンナーが少ないのは、大きな設備面積や費用、そしてなめす時間や労力が必要なことが要因。また、そのコストは価格に反映されるため、素材自体の価格が高くなります。

sotのハンドウォッシュレザーも、栃木レザー社でつくられる革を使ったシリーズです。

通常よりもたっぷりとオイルの入った特注のピット鞣しの革を、丁寧に縫製した後に、独自の手揉み加工で一点ものの凹凸感をつけています。

おそらく、通常のドラム鞣しの革をベースにこの独自加工をしてしまうと、コシがまったくなくなり、ヨレヨレの革製品になってしまいます。

芯にコシがありながらも、ふくらみのある柔らかい質感に仕上がるのは、通常の約7倍もの時間をかけて漬け込むピット鞣しの革をベースに使うからこそです。

また、ここまではタンニンでのピット鞣しについてご説明してきました。

実は、クロムでのピット鞣しをしているタンナーは世界的見てもほとんどないと言われています。

これは、環境に配慮した設備費用の高さや、管理の難しさなどが理由。

クロムとタンニンを比較した記事で、クロムはタンニンの約10倍もの結合力があるとご説明しました。

そんな強靭な結合力をもつクロムを使って、繊維がほぐれることのないピット鞣しをするというのが、最も丈夫な革をつくることができる方法になります。

※現在もそんなクロムのピット鞣しを行っているのが、ドイツのタンナー・ぺリンガー社。このタンナーは、世界最高品質の革製品を作り続けるフランスのメゾンブランドにも革を提供していると言われています。

そのため、「鞣し」という一点のみで革の丈夫さを比較すると、

①クロムを使ったピット鞣しの革
②クロムを使ったドラム鞣しの革
③タンニンを使ったピット鞣しの革
④タンニンを使ったドラム鞣しの革

という順番になります。

しかし、④が実用上で耐久性がないと感じることはありませんし、しっかりとなめされていれば、お手入れ次第で5年10年と使えるので、ご安心ください。

また、耐久性という点でタンニンはクロムに劣りますが、クロムにはない大きな魅力があります。

こだわりのある方はぜひ、この2つの違いや、今回ご紹介した「なめし方」の違いまで理解して革製品を選んでみてくださいね。

sotのメインレザーの鞣し方を全て公開します。

最後に、sotで取扱いのある主な革のなめし方を、まとめてご紹介します。

ぜひ参考にしてみてください。

1. pueblo(プエブロ)
→タンニン・ドラム鞣し(イタリア)
>プエブロの詳しい説明はこちら

2. minerva box(ミネルバボックス)
→タンニン・ドラム鞣し(イタリア)
>ミネルバボックスの詳しい説明はこちら

3. buttero(ブッテーロ)
→タンニン・ドラム鞣し(イタリア)
>ブッテーロの詳しい説明はこちら

4. eleganza(エレガンザ)
→クロム&タンニン・ドラム鞣し(日本・姫路)
>エレガンザの詳しい説明はこちら

5. handwash(ハンドウォッシュ[栃木レザー])
→タンニン・ピット鞣し(日本・栃木)
>ハンドウォッシュの詳しい説明はこちら

6. luke(ルーク)
→タンニン・ドラム鞣し(日本・姫路)
>ルークの詳しい説明はこちら

7. ecomuraless(エコムラレス)
→タンニン・ドラム鞣し(イタリア)
>エコムラレスの詳しい説明はこちら


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