動物の生の「皮」を、素材としての「革」へと変える鞣し(なめし)。

実は、一口に「タンニン鞣し」と言っても、「どのようなタンニンを使うか」によって革の質は変わってくるんです。

今回は、タンニンの種類による革の違いについてご説明していきます。

ただ「タンニン鞣しの革だから想像通りに色が変わるだろう」と革製品を選んでしまうと、後で後悔することになってしまうことも。

ぜひ今回の内容を革製品選びの参考にしてみてください!

目次

①鞣しに使われる2つのタイプのタンニンが、あなたの革製品の「色」を左右します。
・色のダイナミックな変化を楽しみたい人はどちらを選べば良いか
・変化を味わいつつ、新品時の色も楽しみたい人はどちらを選べば良いか
②ビビッドなタンニン鞣し革をお探しの方へ。発色の良いタンニン鞣しの革もあります。

鞣しに使われる2つのタイプのタンニンが、あなたの革製品の「色」を左右します。

クロムやタンニンといった「なめし剤」だけを見て革を判断していませんか?

お茶やコーヒー、ワインにも含まれるタンニンですが、革のなめしに使われる「タンニン」にも実は色々な種類があるんです。

そして、どのタンニンを使うかも、好みという点で革の良し悪しを決める重要な要素。

ここでは、タンニンの種類について見ていきます。

革をタンニン鞣しするときには、主に「ミモザ」「チェスナット(栗)」「ケブラチョ」「タラ」「オーク」など、植物から採ったタンニンを使います。

実はこれらのタンニンは、大きく2つのタイプに分けることができるんです。

それが、「赤み」があるタンニン(縮合型)と、「黄み」があるタンニン(加水分解型)です。

その革に使われているタンニンがこのどちらに属するかによって、革の性質も変わっていくので、こだわる方はぜひここまで注目してみてください。

色のダイナミックな変化を楽しみたい人はどちらを選べば良いか

タンニン鞣しの革を選ぶ最大の理由は、ナチュラルな革の表情と、その変化ですよね。

その変化の大きさや方向性を決めるのは、使われているタンニンの種類です。

結論から言うと、「革の大きな変化を楽しみたい」「革を育てる感覚をより実感できる方が良い」という方は、赤みのあるタンニン(縮合型)でなめされたものを選ぶと良いです。

sotでも取り扱っているイタリアの革「ミネルバボックス」「プエブロ」、栃木県で作られる革「栃木レザー(ハンドウォッシュ)」が、このタイプの革になります。

これらのタンニン(赤みのある縮合型)の革は、「ミモザ」や「ケブラチョ」からとれるタンニンをメインに使っています。

これらのタンニンは、革の繊維と強く結びついて、ギュッと密度を高める性質(難しい言葉で収れん性)が強いタンニン。

つまり、密度が詰まった革がつくりやすいタンニンになります。

そのため、プエブロやミネルバボックスは、繊維がしっかりと詰まって重厚感のある革になっています。

※入れているオイルの量が多いことも要因の一つです。

さらにこれらのタンニンの特徴は、時間が経つにつれて、大きく色が変わっていくことです。

染められた元々の色から、うっすらと赤みが入ったさらに深い色合いへと大きく変化します。

これは、このタンニンが空気や紫外線と盛んに反応する(酸化する)ためです。

この反応によって、表面の成分が形を変えることで見える色合いも変わっていく、ということです。

色が大きく変わっていくような、「育てる感覚」を実感しやすい革がお好きな方は、ぜひ「ミモザ」や「ケブラチョ」をメインに使っている革製品をを選んでみてください!

変化を味わいつつ、新品時の色をもっと楽しみたい人はどちらを選べば良いか

「革の色が変わっていくのは好きだけど、最初に見て気に入った新品の色から、あまり大きくは変わって欲しくない」

そういう方もいると思います。

そんなあなたは、もう一方の「黄みがあるタンニン(加水分解型)」をメインに使っている革を選ぶと良いと思います。

具体的にいうと、「チェスナット(栗)」「オーク」「タラ」などから採れるタンニンです。

これらのタンニンは、革の繊維を引き締める性質(収れん性)があまり強くないため、じっくりと時間をかけて内部に染み込ませることで革と結びつきます。

このタンニンを使って浅くなめしてしまうと質の低い革になってしまいますが、逆に言うと、たっぷりと染み込ませて深くなめすことで、内部の繊維までしっかりとタンニンが結合した素晴らしい革に仕上がります。

その良い例が、オークの樹皮・オークバークからとれるタンニンでなめされる「オークバークソール」です。

これは高級革靴のソール(底)に使われており、ソール交換の際、一般的なレザーソールと比べると5,000円ほどの高い価格になります。

このオークバークのタンニン鞣し革を作っているタンナーは、世界的にみても数少ないと言われています。

例えば、イギリスの老舗タンナー・ベイカー社のものは、大量のオークバークを入れた液に、実に1年間もの長い間漬け込んでなめされています。

こうすることで、強靭な繊維で摩耗に極めて強い革が出来上がります。

気になる方はこちらで調べて見てください。

また、このタイプ(黄みのある加水分解型)のタンニンでなめした革は、色は濃くなっていきますが、先程のタイプ(赤みのある縮合型)のタンニンと比べて緩やかに変化していきます。

つまり、空気や紫外線と反応しにくいということです。

そのため、数百年保管する本の装丁には、これらのタンニンを使った革を使うことが多いそう。

結論としては、新品の時の色を楽しみつつ、緩やかに革を育てて生きたいという方は「チェスナット(栗)」「オーク」「タラ」などをメインに使った革を選ぶと良いと思います。

もちろん、ご紹介した2つのタイプのどちらか一方のタンニンのみを使ってなめす、ということもあまりないので、あくまでメインで使っているのがどちらかという部分で傾向を判断してみてくださいね。

ビビッドなタンニン鞣し革をお探しの方へ。発色の良いタンニン鞣しの革もあります。

タンニン鞣しの革をよくよく見てみると、どれもナチュラルなアースカラー系のものが多いと思いませんか?

これは、先程までにご説明してきたように、植物から採ったタンニン自体に色がついているためです。

そのため、タンニン鞣しの風合いを生かすように染料で革を染めると、タンニンそのもののナチュラルカラーに染料の色が重なった「混色」になるため、ビビッドな色の革が作りにくいんです。

発色の良い革をタンニンでつくるときには、ベースの革が白くなければいけません。

そのときに使われる手法の一つが、合成タンニン単体による鞣しです。

合成タンニンは、植物タンニンと同じような構造を化学的に作り出したタンニン。

植物から抽出するわけではないため、自然の不純物が少なく、単独で鞣すことで「白い革」を作ることができます。

また、紫外線に対しても比較的に強いため、赤みのある縮合型タンニンのように、ダイナミックに色が変化することはありません。

そのため、合成タンニンで鞣した白い革をベースに、ビビッドな染料で染め上げることで、発色の良いタンニン鞣しの革を作ることができるんです。

ビビッドな革を作りやすいクロム鞣しの革は無機質な印象になりがちなので、革らしい風合いも残しつつ色鮮やかな革を楽しみたいという方は、このような合成タンニンでなめされた染料染めの革を選ぶと良いと思います。

ぜひ今回ご説明した内容を参考に、どのようなタンニンが使われているかにも注目して、好みの革製品を見つけてみてくださいね。


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