ずらっと並んだ製品を見てまず目に入ってくるのは、ランダムに浮かぶ革らしい「シボ」。

スムースに近い部分もあれば、大きく萎んだような荒々しい凹凸もあります。

その中の一つを手に取ってみると、程よい重量感がありながら、しっとりとして柔らかい質感が手に伝わります。

 

さらに、この革の魅力といえば何といってもその経年変化。

使うたび、触れるたびに自然な艶を帯びていき、ヴィンテージのような奥深い色に変化していきます。

今回は、初めて革を手に取る人にも、革好きの上級者にも等しく美しい表情の変化を見せてくれる革「MINERVA BOX(ミネルバボックス)」のご紹介です。

1000年の歴史を持つ製法。触れているだけで自然と奥深い色につやめく、その革の秘密。

「革の聖地」とも言われるイタリア・トスカーナ州。

チーズやワインの産地としても有名なこの地で、ミネルバボックスは作られています。

この辺りの地域では、なんと1000年以上前から自然成分のみを使った革が作られていたそう。

この革は、その当時の文献をもとに、栗などの樹木からとれる「タンニン」と、肉牛の副産物としてとれる天然オイル(牛脚油:ぎゅうきゃくゆ)を使って作られるオーガニックな革です。


(身近な所では、お茶やコーヒー、ワインなどの渋みもタンニンによるものです)

皮にタンニンをじっくりと浸透させる(なめす)ことで、皮の繊維とタンニンが化学反応して結合。

これによって、生の「皮」が、腐ることのない「革」へと変わります。


(簡単なイメージ)

そして、繊維の隅々まで染み込んだタンニンは、紫外線や空気に反応してその「成分の形」を変化させていきます。

色の見え方は、光を反射する表面の成分の形によって変わるため、タンニンでなめした革は徐々にその色を変えていくんです。

ミネルバボックスは、たっぷりのタンニンを染み込ませているため、樹齢を重ねるたび色の奥深さを増す木々のように、艶やかで深い色合いに変わっていく楽しさを味わうことができます。


(キャメルのキーケースの経年変化例。ツヤはタンニンの可塑性によるもの)

また、この革の魅力はそれだけではありません。

革にタンニンを入れた後に、牛からとれる天然オイル(牛脚油)もたっぷりと浸透させていきます。

このオイルの香りと樹木由来のタンニンの香りと混ざり合って生まれる香りも魅力の1つです。

その革らしい香りに誘われて、思わず鼻を近づけてしまうような、魅力的な香りを漂わせます。

さらに、革全体に染み渡った油分によって、表面はしっとりとして手に馴染み、多少の水や乾燥からも革を守ってくれます。

これは、牛脚油の主成分である「オレイン酸」による効果が大きな要因。

オレイン酸は肌を乾燥から守ってくれる成分で、人の皮脂に多く含まれており、革にもよく馴染みます。

この成分は劣化に強く、乾燥もしにくいため、革の内側の適度な水分量を保ちながら、革の柔らかさを保ち続けてくれるんです。

そんな天然の成分が、ミネルバボックスのダイナミックな変化を支え、革という素材を存分に楽しませてくれます。

気づくと手に触れてしまう。アルプスの土地が育む革はこうして、ふっくらとした質感に仕上がります。

sotは食肉の副産物として革を使用しています。

そのため、製品に使っているのは最も多く流通している成牛(大人の牛)の革。

成牛の革は子牛の革に比べて耐久性が高いため、長く愛用することで生活のパートナーとなるような革製品を志向するsotにはぴったりの素材です。

※子牛や成牛の革の性質の違いはこちら

今回ご紹介するミネルバボックスは、そんな丈夫な成牛の中で最もきめ細かく柔らかい、メス成牛の革「カウ」になります。

アルプス山脈近くの広大な土地で、のびのびと育った雌牛の革は、柔らかさの中にも芯が残る革質になります。

また、畳3枚ほどもある成牛の大きな一枚の革の中で、ミネルバに使用しているのは「ショルダー」と呼ばれる肩周りの部分。

この部分は、首や前足が動くのに合わせてよく伸び縮みするため、繊維が丈夫でありながら、適度な柔らかさがあるんです。

さらに、この部分の革で最も特徴的なのが、「トラ」と呼ばれる縞模様です。


(縦方向にうっすらと入ったトラ)

これは、よく動く肩回りの革ならではのもので、元々の皮にあったシワが模様として残った、天然の革の証です。

手のひらのシワが人それぞれ異なるように、このトラの模様も、牛それぞれで入り方が異なります。

さらに、革をパーツに切り分ける時にも、どのパーツにどのように模様が入るかが異なるため、製品1つ1つが一点物の模様になるんです。

※トラが入らない個体や、目立たない個体も多いです。

そんな魅力的なショルダーをじっくりとなめした後は、染料を浸みこませ、革を芯まで染め上げます。

染料は、顔料のように表面を覆い隠すことがないので、革ならではの表情や模様をダイレクトに楽しめるのが良いところ。

そうして染め上がった革に、今度は、特別な仕上げを施していきます。

それが「空打ち(milling:ミリング)」と呼ばれる加工。

この加工は、バスケットゴールほどの高さのある大きな空のドラムの中に革を入れて、軽く打ちつけるようにぐるぐると回します。


(このドラムは革をなめしたり、染めたりするのにも使います)

この加工によって、丈夫さと柔らかさを併せ持つカウレザーの繊維が程よくほぐれて、革らしいナチュラルなシボがランダムに現れてきます。

こうして仕上がったふっくらとした繊維と、たっぷりと含んだオイルのしっとり感に、ついつい触りたくなる革になります。

そして知らず知らず触っているうちに、タンニンの性質によってさらに色ツヤが深まるため、表情の劇的に変化していくんです。

そんな魅力的な質感と経年変化を楽しめるイタリアの革を、日本の職人が丁寧に仕立てたミネルバボックスシリーズ。

その表情とダイナミック変化を、あなたも楽しんでみませんか?

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