パッと目を引く金色の革。

手に取ってみて感じるのは、ハリのあり質感と、スルりとした乾いた手触り。

表面をじっと見てみれば、霞がかったような上品な金色に引き込まれます。

そこにいやらしさはなく、独特のムラのある表情が、まるで雨風に磨かれた金閣寺の壁面のような風情を感じさせます。

今回は、そんな唯一無二の表情を持つ革「エコムラレス(ECOMURALESS)」のご紹介です。

持ち歩いているだけで、なんだか少し贅沢な気分にさせてくれる、そんな魅力を持っている革です。

内側にのぞく白木のようなベージュ。植物由来の成分のみでなめした「素」の革を味わう。

金色の内側にのぞく、柔らかなベージュ色。

これは、植物由来のタンニンのみでなめし、一切染色をしていない素の革(ヌメ革)の色です。

切り出したばかりの白木(しらき)のようなベージュが、趣のある金色とのコントラストに映えます。

土台に使われているこの革は、イタリア・トスカーナ州で厳しい基準をクリアしたもの。


(環境への配慮など数々の基準をクリアしたことを証明するタグ)

牛肉の副産物として皮を活用し、樹木などから取り出した「植物性タンニン」のみを使ってなめされています。


(身近な所では、お茶やワイン、コーヒーの渋みもタンニンによるもの)

さらに、なめした後に「革を染めていない」ということが、この革のハリ感と、長くお使いいただける丈夫さにつながっているんです。

というのも、革を染色するときには、バスケットゴールくらい高さがある大きなドラムの中で、革をぐるぐると回しながら、染料を叩き入れていかなくてはなりません。


(革のなめしや染色に使うドラム)

そして革にしっかりと色を浸透させるためには、多くの場合、半日から1日ほど時間がかかります。

この間ずっと、革の繊維はほぐれていってしまいます。

しかし染められていない革は、この工程がない分、しっかりとしたハリが残り、染められた革よりも丈夫に仕上がるんです。

耐久性は、革の醍醐味でもある「表情が変わっていく楽しさ」を味わうための前提となるもの。

革が、その表情の変化をみせてくれる前に壊れてしまっては、その魅力を最大限楽しむことができないからです。

エコムラレスは、そんな長くお使いいただくための耐久性を持ちながら、植物由来のナチュラルな色と革らしい香りも楽しむことができる革に仕上がっています。

まるで雨風に磨かれた金閣寺。他の革では体験できない風情漂う表情は、こうして出来上がります。

独特なアンティーク感のある金色。

この風情漂う表情は、どのようにして生まれるのでしょうか。

土台に使うのは、イタリアの伝統的な植物タンニン鞣しでつくられる、素上げの牛革。

まずは、この革の表面全体に、金色の箔を貼り付けます。

しかし、ただ箔をのせただけでは、表情がのっぺりとして、全体が輝きすぎてしまいます。

そこで次に行うのは、一枚一枚手作業でやすりをかけて、革の表面を不均一に削っていく工程。

これによって、全体の輝きは上品に落ち着き、ところどころ土台のベージュ色がのぞく、個性的な表情に仕上がるんです。


(左:やすり掛けなし 右:やすり掛けあり)

また「箔貼り」は、革の中に浸透していく染料とは異なり、表面をコーティングする形で革に色をつけるもの。

そのため、水や汚れには強いですが、長い間使い込むうちに表面が剥がれていってしまうというデメリットがあります。

実は、その性質を逆に利用してデザインされたのが、このエコムラレスレザーなんです。

2年、3年と使い込むと、表面のランダムに削られた部分を中心に、金色の箔がゆっくりと落ちていきます。

すると、そこから徐々に、土台の革のナチュラルなベージュ色が姿を現していくんです。


(左:新品 右:2年間使用)

金色の中からグラデーションのようにベージュ色が覗き始める表情は、何とも言えない風情を感じさせてくれます。

アメ色の革に金粉をまぶしたよう。ゆっくりと無二の表情に育つ過程を楽しむ。

しかし、この革の変化はそこで終わりではありません。

表面のところどころから覗くベージュの革には、たっぷりと植物由来のタンニンが染み込んでいます。

このタンニンの性質によって、エコムラレスはその表情をさらに変化させていきます。

樹木をはじめとして、お茶やコーヒーにも含まれるタンニン。

この成分は、酸化や紫外線の影響によって、ベージュ色からアメ色へと、その色合いが深く変化していくんです。

例えば、張ったばかりの無垢の木のフローリングも、年月が経つうちに明るいベージュから深いブラウンへと変わっていきますよね。

それと同じで、樹木から抽出したタンニンをしっかりと浸み込ませた革も、使い込むうちに深い色合いに変化していきます。


(タンニンでなめした革の変化例 製品:ミネルバボックスレザーキーケース

さらに、色合いの変化と同時に起こるのが、ツヤの変化。

これは、タンニンと結びついた革が強く表すようになる「可塑性(かそせい)」という性質によるもの。

この性質は、粘土のように「変形させる力を加えると元に戻らない性質」のことを言います。

例えば、あなたが持っているお財布は、使うたびに手で表面に触れますよね。

この時、手と革の表面の間で摩擦(平らにならそうとする力)が働き、表面の細かな凹凸が平らにならされていきます。

これが繰り返されることで、なめらかになった表面が多くの光を反射するようになり、きれいなツヤが現れてくるんです。


(タンニンでなめした革の変化例 製品:ブッテーロレザーキーケース

また、エコムラレスは、4年, 5年と使い込んでいくと、だんだん金色の顔料と土台の革の面積が逆転してきます。

すると、タンニンの作用でベージュからアメ色になった革に、金粉をまぶしたような他にない表情へと変化していくんです。

そんな、他の革では味わえない何段階もの表情の変化を、あなたもぜひ体験してみてください。

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