こんにちは。
東京新丸ビル店の長谷川です。
今回は『染色』に関して少しお話しできればと思います。
染色の仕上げ方によって経年変化が出やすい革、出づらい革。
色落ちしやすい、しづらいということにも染色の仕上げ方が関係していたりします。
少しでもご自身に合った革選びに役立てていただけると嬉しいです。
まず、革には大きく2種類の染色方法があり、
「染料仕上げ」と「顔料仕上げ」があります。
● 染料仕上げ
天然皮革の表面のことを銀面と呼んでいますが、
この銀面の表情を生かした染色が、染料仕上げです。
銀面に色を付けるというよりかは、革の繊維を染めて仕上げていきます。
メリットは、染料で銀面を覆い隠さないので、
使い込むことで出てくる革本来の色や艶の変化が顕著に表れやすいです。
また、革が本来持つムラや表情(シワやキズ)が残りやすいので、
それが天然皮革らしい唯一無二の表情となって楽しめます。
革の繊維(芯)まで染色されているので、銀面に多少の傷がついてしまっても、周りにある染色された繊維がカバーしてくれるので、少し撫でてあげるだけで傷が目立ちにくくなります。
デメリットは耐水性が低く、水や汗でシミになってしまう可能性があります。
また、染色された繊維が表に出ている状態なので、
摩擦による色移りには気を付けなければいけません。
● 顔料仕上げ
こちらは革の銀面に、ペンキを塗るように着色していきます。
メリットは、革の繊維と顔料の相性を気にせず染色できるので、
染料では出せない鮮やかな色味や、多少の傷や汚れのある革でも、均一できれいな表面に仕上がります。
皮革繊維の上に顔料をのせて着色をしているので、顔料が水分から皮革の繊維を守ってくれるため、ある程度の撥水性や、傷にも強いです。
デメリットは、顔料で革の繊維が隠れてしまっているので、経年変化が表れにくいです。
天然皮革らしさは幾分損なわれてしまいます。
ちなみにsotで扱っている素材は、染料仕上げで染色されたシリーズが多いです。
天然皮革らしさを味わいたいという方にはおすすめです。
どちらの染色が良いですか?と聞かれることも多いのですが、
使用するご本人が、使用する革製品に何を求めるかによって、どちらの染め方が適しているのかが決まってきます。
「革の染色や加工は、料理に似ている」という言葉があります。
料理は下処理や調味、料理人の技によって味が決まります。
同じように、革の表情や質感の良さは、
作業の手間や薬品、加工する人の腕によって、決まってくるからです。
仕上げる時間や環境によっても仕上がりに大きな違いが出てきます。
基本の作業は一緒でも、皮革染職人の技術によってさまざまな表情が生まれてくるのです。
今回は『染色』に関してお話してきましたが、まだまだ私も知らない事ばかり。
少しでも知識が増えてくると、自身が求める革までの近道にもなりますし、何より革選びが楽しくなると思います。
革選びに少しでもお役立ていただければ嬉しいです.