「牛革」と一口に言っても、その「部位」によって、大きく性質が異なることをご存知ですか?

革が革製品になったとき、どの部位の革が使われているかによって製品としての性質も大きく異なってくるんです。

今回は、PART1の「牛の年齢と性別から見る革の選び方」に続いて、使われている革の「部位」に注目した革製品の選び方をご説明していきます。

革製品に使われる部位は、日本でよく耳に分類で言うと、大きく分けて3種類。

この3種類を革製品選びに重要な「丈夫さ」「やわらかさ」「革らしさ」の観点から順に見ていきます。

使われている革の部位が説明されていない場合にも、「ある部分」に注目することで、どの部位なのかを大まかに判断できるので、その方法もご説明します。

ぜひ、あなたの相棒探しの参考にしてみてください。

  • 目次
    ①「丈夫さ」を重視する人はどの部位を選べば良いか
    ②「やわらかさ」を重視する人はどの部位を選べば良いか
    ③「革らしさ」を重視する人はどの部位を選べば良いか
    ④使われている革の部位を見極める簡単な方法
    ⑤主要な牛革について、使われている革の部位からその特徴をご紹介
    ・プエブロ
    ・ミネルバボックス
    ・ブッテーロ
    ・ハンドウォッシュ(栃木レザー)

「丈夫さ」を重視する人はどの部位を選べば良いか

あなたの顔、お腹、そして手のひら。

手で触れてみると、肌の質感はそれぞれ異なりますよね。

これは牛も同じで、部位によってその特徴は変わってくるんです

まずは、革製品に求める重要な要素である「耐久性」について、部位ごとの違いを見ていきます。

牛革の部位は、一般的に大きく3つに分けられます。

まず1つ目が、腹部を表す英語「belly」からきている「ベリー」というお腹周りの部分。

この部位は繊維同士の交わりがゆるやかで、革の中の空間も多い構造になっているため、ふっくらと伸びるような革質になります。

食肉になる牛はみんな太っているため、「太ったお腹」をイメージすると、この特徴は理解しやすいのではないでしょうか。

繊維が密に絡み合っていないので、強度的には3つの中では最も低くなってしまいますが、逆に内部に空間があることで水分をよく吸ってくれるのが良いところ。

この特徴を活かして、靴のインソールやライニングにもよく使われています。

続いては、「べンズ」とよばれる背中からお尻にかけての部分。

この部分は動くときに曲げ伸ばしされることが少ないため、繊維が密に絡まり合い、ぎゅっと詰まった革質になります。

そのため、3つの部位の中で最も丈夫なのがこの部分。

おなか周りのベリーとは正反対の特徴で、強度は高いですが詰まっている分、伸びや吸湿性では劣ります。

そのため薄くせずに使って、ベルトや高級靴のアウトソールになることが多い部位です。

そして最後が、英語のshoulderから来ている「ショルダー」と呼ばれる肩周りの部分です。

この部分は、お腹周りのショルダーと、背中からお尻にかけてのべンズのちょうど中間くらいの革質。

繊維同士が密に絡み合いながらも、首や前足の動きに合わせてよく動く部分なので、程よく繊維がほぐれています。

そのため、小物やバッグなどオールマイティに使いやすく、強度はベリーとベンズの中間になります。

結局、部位ごとの耐久性をまとめると、

【耐久性】
べンズ
>ショルダー
>ベリー

という順位になります。

以前ご説明した「年齢による特徴の違い」と合わせて考えると、牛革の耐久性は、カーフのベリーが最も低く、ブルのべンズが最も高いということになります。

部位までは明確に表記していなかったり、部位で分けずに使われていることも多いですが、明記してある場合はぜひ参考にしてみてください。

「やわらかさ」を重視する人はどの部位を選べば良いか

続いては、牛革の部位ごとの「やわらかさ」について。

こちらは、耐久性と順番が逆転します。

つまり、

【やわらかさ】
ベリー
>ショルダー
>べンズ

という順番になり、お腹周りのベリーが一番柔らかく、背中からお尻にかけてのベンズが一番しっかりした革質になります。

これは主に繊維の密度の差によるもの。

先ほども説明したように、ベリーは繊維と繊維の間に隙間が多く、繊維同士がゆるやかに絡み合っているため、ふっくらと柔らかい革質になります。

一方でべンズは、ぎっしりと密に繊維が絡み合っているため、ハリやコシが強い質感に。

強い負荷をかけ続けなければベリーを選んでも革が破れてしまうということはないので、初めから柔らかくモチっとした革がお好きな方はベリーを選ぶと良いと思います。

一方、とにかく丈夫で、しっかりとしたハリ感を求める方は、べンズを選ぶと満足できるはずです。

ショルダーは、そのふたつの中間で、程よいハリ感がありながらも、何の製品にしても使いやすい柔らかさをもっているので、バランスのとれた万能な革質ですね。

程よくハリがあって、程よく柔らかい、中間の革質を求める方は、ショルダーを選ぶと良いかもしれません。

<注意点>

これは他の条件を全て同じにしたときの比較になります。
べンズでもオイルをたくさん入れて揉み解したものは柔らかくなり、ベリーでもオイルを少くして強めにアイロンをかければハリを出すこともできます。

「革らしさ」を重視する人はどの部位を選べば良いか

続いては「革らしさ」について。

近年では、合皮をつくる技術が大きく進歩しており、普段革を扱っているプロでも、表を見ただけでは見分けるのが難しいレベルのものも出てきています。

しかし合皮の場合は、均一な表情になりがちなので、ある特徴に注目すれば、合皮と本革を判別することもできます。

そんな本革ならではの特徴の中で代表的なのが、「トラ」と「血筋」という特徴です。

血筋は、読んで字のごとくですが、もともと牛が生きていたころの血管の筋が模様として浮き上がったもの。

葉脈や稲妻のような模様で、元々の皮が比較的に薄い部分に見られます。

革は首からおしりにかけて薄くなってくるので、具体的にはショルダーよりはベンズやベリーによく見られます。

そして、もう一つの天然の模様「トラ」

これは、肩周りのショルダーに特有の縞模様です。

この模様は、首や前足の動きに合わせてよく動くショルダーならではのもので、元々の皮にあったシワが残った天然の証の一つです。

血筋よりも太く、大きく入るのが特徴で、手のひらのシワが人それぞれ異なるように、このトラの模様も牛それぞれで入り方が異なります。

そのため、この天然の縞模様を好む人にとっては、ショルダーは自分だけの一点ものを探す楽しみもあります。

ショルダーより後方、背中からお尻にかけての部位であるベンズは、繊維が緻密で伸び縮みすることも少ないので、比較的均一な表情になります。

そしてお腹周りのベリーはその逆で、繊維の密度ゆるやかなので、細かなシワや「シボ」と呼ばれる縮んだような模様が出てきやすい部位になります。

しかし革はアイロンをかけて仕上げることも多いので、シボをたたせる仕上げをしなければ、どの部位も全体的にはスムースな表情に仕上がります。

その中でも、トラなどのシワや血筋はアイロンをかけても残るので、血筋は全体に見られるとして革に残る天然の模様を「革らしさ」とすると、

【革らしさ】
ショルダー(トラ)、ベリー(細かなシワ)
>ベンズ

となるかと思います。

もちろんこれは大まかな順位付けで、血筋のたくさん入ったベンズと、トラの入っていないショルダーを比べたら、前者の方が革らしいと感じると思います。

なので、革らしい革がお好きな方は、個体によって様々な「シボ」や「血筋」、そして「トラ」などに注目して店頭で比べてみることをおすすめします。

sotでも店頭に在庫があるものは、比較した上でお選びいただけるので、お気軽にお声掛けください。

誰でも簡単に製品に使われている部位を見分けるための着眼点

ここまでの説明を読んで、

「部位ごとの違いはわかったけど、説明されていない場合はどうやって部位を判断したらいいんだろう」

きっとそう思いますよね。

ここでは、3つの部位の大まかな見分け方をご説明していきます。

まず1つは、表面に「トラ」があるかをチェックすること。

トラがあればショルダーだとすぐにわかります。

そして、トラのない革の部位を見分けるときに注目する点は「裏面(床面)の毛羽立ち」です。

革は、いわゆる表側(銀面)と、スエードのような毛羽だった裏側(床面)の2層のつくりになっています。

そのうちの裏面が見える仕立ての革製品については、何個か比べることで革の大体の部位を判断することができるんです。

例えば、栃木レザーを使ったsotの「ハンドウォッシュレザー長財布」

こちらのお財布は裏地のない仕立てになっています。

この長財布を3つ比較してみましょう。

上の個体は繊維が太く、大きく毛羽立っているのに対して、下の個体は比較的に細く、細かく毛羽立っているのがわかると思います。

そして真ん中がその中間くらいですね。

先ほどご説明したように、ベンズ>ショルダー>ベリーの順番で繊維が詰まった革質になります。

この性質は裏面(床面)にも現れるので、この場合、大体ですが

上の個体:ベンズ
真ん中の個体:ショルダー
下の個体:ベリー

と推定できます。

もちろん、この3部位の分け方は厳密なものではないので、上の個体が「べンズ寄りのショルダー」のこともありますし、真ん中の個体が「ショルダー寄りのベリー」のこともあります。

さらに、プエブロブッテーロのように革の部位が「ショルダー」とわかっている場合は、

裏の繊維が細かければ「べンズ寄りのショルダー」
逆に繊維が大きければ「ベリー寄りのショルダー」

とわかります。

なので、前者と後者の個体を比べるときには、前者をべンズ、後者をベリーと考えて特徴を考えると良いと思います。

この見分け方は裏面が見えない場合は難しいですが、裏地のない仕立ての製品を選ぶときには、ぜひ参考にしてみてください。

主要な牛革について、使われている革の部位からその特徴をご紹介

最後に、sotでも取扱っている有名な革を、使っている部位に注目して簡単にご紹介していきます。

ぜひお買い求めいただく際に参考にしてみてください。

和紙のような無二の表情と、色つやのダイナミックな変化を味わえる革「PUEBLO(プエブロ)」

まずは、手作業によって和紙のような独特な表情が表現された革、PUEBLO(プエブロ)について。

イタリアで1,000年もの歴史をもつ製法で、植物由来の成分のみを使って仕上げられるこの革は、世界一と言って良いほどの劇的な変化を見せてくれます。

このシリーズで使っている部位は「ショルダー」になります。

ベンズに次いで繊維がつまったその革質は、丈夫さを感じられるハリ感がありながら、硬すぎないのが特徴。

長く使い込んでもヨレヨレにならず、その表情をずっと楽しませてくれます。

プエブロの詳しい説明は【こちら】
商品ラインナップは【こちら】

革らしいシボとふっくらとした柔らかさ。艶を増しながら体の一部のように馴染んでいく革「MINERVA BOX(ミネルバボックス)」

この革は、先ほどのプエブロと同じイタリアの名門メーカーでつくられており、ベースは同じ皮です。

つまり、こちらも使われている部位は「ショルダー」になります。

この革に特徴的なのは、コシがありながらも適度な柔らかさのあるショルダーを、揉みほぐしてふっくらさを出す「空打ち」と呼ばれる加工。

プエブロが表面を毛羽立たせる加工をするのに対して、ミネルバボックスは、大きなドラムの中でぐるぐると革を回す(空打ちする)ことで、ふっくらとした柔らかさと、ランダムでナチュラルな革らしいシボ感が引き出されています。

使い込むほどに艶を増していきながら、すっと手に馴染む感覚は一層強くなり、色ツヤを増しながらまるで自分の体の一部のように馴染んできます。

ミネルバボックスの詳しい説明は【こちら】
商品ラインナップは【こちら】

弾むようなコシと引き込まれるような深い色合いが、美しく艶を帯びていく革「BUTTERO(ブッテーロ)」

続いてご紹介する「ブッテーロ」も、イタリアの伝統製法で植物タンニンのみを使ってなめされた革。

この革も、牛革のショルダーを使ったシリーズになります。

ショルダーの密に詰まった繊維の丈夫さと、タンニンによってぎゅっと引き締まった革質が、弾むようなコシとなって現れています。

また、表面を覆い隠さない染料染めによって奥行きのある色合いに。

さらに、うっすらと表面にやすりがけをして滑るような表面に仕上げられています。

この、なめらかで引き込まれるような深い表情が、使い込むほどに色艶を増して美しい透明感を帯びてきます。

ブッテーロの詳しい説明は【こちら】
商品ラインナップは【こちら】

一点物の凹凸感と、ダイレクトに伝わる革の豊かな風合いを持つ革「HANDWASH(ハンドウォッシュ)」

こちらは「栃木レザー」と呼ばれる、栃木県のタンナー(革メーカー)がつくる革を使ったシリーズ。

この革は、特に部位を限定していないシリーズになります。

裏地のない仕立てになっているので、先ほどご説明した判別方法で、裏面からお好みの部位を選んでみてください。

ベースには強度の高いステアの革を使っており、通常の約7倍もの時間をかけて植物タンニンに漬け込むことで、繊維にダメージを与えずになめされており、長くお使いいただける耐久性が魅力の革です。

さらに、特注でオイルをたっぷりと入れた革を、創業96年の老舗工房で縫製したのち、手作業でひとつひとつ洗い加工することで一点ものの凹凸感をつけています。

洗いによって引き出された革らしい表情と、1つとして同じものがない凹凸感を、ぜひ楽しんでみてください。

ハンドウォッシュの詳しい説明は【こちら】
商品ラインナップは【こちら】