あなたが普段食べている牛肉。
その副産物としてとれる「皮」をゴミにせず、腐らないように加工する(なめす)ことで、「革」という素材が出来上がります。
このとき、元々の牛の「年齢」や「性別」によって、革の特徴が大きく変わってくることを、あなたはご存知ですか?
人の肌の質感が歳を重ねるについて変わっていくのと同じように、牛の皮も全く性質が異なるんです。
今回は、牛の年齢によって、革にどのような違いが生まれるのかを、革製品を選ぶときに知っておくべきポイントに絞ってご紹介していきます。
日本でよく耳にするのは、大きく分けて5種類。
この5種類を、長く愛用するために必要な「丈夫さ」と、革の所有感を高めてくれる「肌触り」の観点から、わかりやすくご紹介していきます。
ぜひ革製品を選ぶ際の参考にしてみてください。
- 目次
①「丈夫さ」を重視する人はどの年齢の革を選べば良いか
②「肌触り」を重視する人はどの年齢の革を選べば良いか
③主要な牛革について、原皮の年齢や性別から特徴をご紹介
・プエブロ
・ミネルバボックス
・ブッテーロ
・ハンドウォッシュ(栃木レザー)
「丈夫さ」を重視する人はどの年齢の革を選べば良いか
まずは丈夫さの観点からみていきます。
わかりやすい例として、人の肌で考えてみましょう。
子供の肌は繊細ですが、年齢を重ねて大人になっていくにつれて肌は厚く、そして強くなりますよね。
これは牛でも同じことが言えて、子供の牛の革(カーフ)に比べて、大人の牛の革(カウ、ステア、ブル)の方が丈夫になるんです。
そして、青年くらいの牛の革(キップ)が、その中間くらいの強度になります。
※ヨーロッパではカーフとキップをまとめてカーフと呼ぶことも多いです。
また、少し複雑ですが、一般的に流通している大人の牛の革の中には「カウ」「ステア」「ブル」という3つの種類があります。
まず、カウというのが「メスの成牛」のこと。
そして、ステアとブルが「オスの成牛」のことを言います。
どちらが丈夫な革になるかは、再び「人」で考えてみるとわかりやすいと思います。
一般的に、男性よりも女性の肌の方が薄くて繊細ですよね。
それと同じで牛についても、メスのカウよりも、オスのステアやブルの方が丈夫な革になります。
それでは、ステアとブルの違いは何でしょうか。
これは、小さい頃に去勢をしているかどうかです。
ステアは「去勢ありのオス成牛」、ブルは「去勢なしのオス成牛」のことを言います。
去勢していないオスのブルは、気性が荒く、喧嘩などで体がぶつかり会うことが多いので、革がより厚く、強くなります。
一方でステアは、同じオスでも気性が穏やかになるので、ブルよりは落ち着いた革質になります。
結局、丈夫さの順番をまとめると、
【丈夫さ】
成牛(ブル>ステア>カウ)
>中牛(キップ)
>子牛(カーフ)
となります。
使われている革の耐久性を気にするときには、この順位をぜひ参考にしてみてください。
「肌触り」を重視する人はどの年齢の革を選べば良いか
革製品は、長く使える丈夫さだけでなく、温かみのある肌触りも魅力の1つですよね。
続いては、その肌触りを左右する、革のきめ細かさや柔らかさについてみていこうと思います。
先に結論を言ってしまうと、このきめ細かさは、先ほどみた耐久性に「反比例」していきます。
つまり、成牛の革(カウ、ステア、ブル)に比べて、子牛の革(カーフ)の方が、肌触りなめらかでソフトな風合いになります。
【きめ細かさ】
子牛(カーフ)
>中牛(キップ)
>成牛(カウ>ステア>ブル)
赤ちゃんの肌がスベスベで柔らかいように、これは人でも同じなので実感しやすいですよね。
丁寧に仕上げられたカーフを使ったお財布は、お会計をした後にもずっと持っていたくなるくらいなめらかな肌触りになるんです。
逆にブルになると、喧嘩などによって、硬く、荒々しくなった表情になります。
そのため、とにかく丈夫でワイルドな革がお好きな方にはおすすめです。
このように、年齢によって革のきめ細かさが変わってくるので、肌触りを重視する方は、ぜひこの順番を参考にしてみてください。
<注意点>
ただ、丈夫さについても言えることですが、この比較は他の工程を全く同じにしたときの話なので、それぞれ別の加工をすることで順番が逆転することもあります。
例えば、成牛の革でもオイルをたっぷり入れたり、揉みほぐしたりすることでやわらかくなりますし、全体をうすーくやすりがけして表面を整えれば、きめ細かくすることもできます。
比較的に綺麗なキップやステアの革の肌目を整えて、「~カーフ」と名付けているブランドもあるので、「本物」を求める方は注意してください。
主要な牛革について、原皮の年齢や性別から特徴をご紹介
最後に、sotでも取扱っている有名な革を、牛の年齢や性別からご紹介していこうと思います。
まず前提としてsotは、使い込むほど馴染み、持ち主の生活の一部になるような革製品を指向しています。
そんな経年変化の土台として必要なのが、長く使いこめるだけの丈夫さ。
そのため、取り扱っている革のほぼ全てが「成牛」の革になります。
もちろん、肌触りのなめらかさではカーフに劣りますが、緻密な繊維の層が厚くなっているため、耐久性は大きく優ります。
そんな丈夫さを持つ成牛の革をご紹介していくので、ぜひ革製品選びの参考にしてみてください。
和紙のような無二の表情と、色つやのダイナミックな変化を味わえる革「PUEBLO(プエブロ)」
まずは、手作業によって和紙のような独特な表情が表現された革、PUEBLO(プエブロ)について。
イタリアで1,000年もの歴史をもつ製法で、植物由来の成分のみを使って仕上げられるこの革は、世界一と言って良いほどの劇的な変化を見せてくれます。
このシリーズの原皮は「メスの成牛」、つまりカウレザーになります。
成牛の丈夫さを感じられる硬すぎないハリ感と、長く使い込んでもヨレヨレにならない素性で、その表情をずっと楽しませてくれます。
プエブロに関する詳しい説明はこちら
革らしいシボとふっくらとした柔らかさ。艶を増しながら体の一部のように馴染んでいく革「MINERVA BOX(ミネルバボックス)」
この革は、先ほどのプエブロと同じイタリアの名門メーカーでつくられており、ベースは同じ皮です。
つまり、こちらもカウレザーになります。
この革に特徴的なのは、成牛の中でも柔らかいカウのふっくらさを底上げしてくれる「空打ち」と呼ばれる加工。
プエブロが表面を毛羽立たせる加工をするのに対して、ミネルバボックスは、大きなドラムの中でぐるぐると革を回す(空打ちする)ことで、ふっくらとした柔らかさと、ランダムでナチュラルな革らしいシボ感が引き出されています。
使い込むほどに艶を増していきながら、すっと手に馴染む感覚は一層強くなり、まるで自分の体の一部のように馴染んできます。
弾むようなコシと引き込まれるような深い色合いが、美しく艶を帯びていく革「BUTTERO(ブッテーロ)」
続いてご紹介する「ブッテーロ」も、イタリアの伝統製法で植物タンニンのみを使ってなめされた革。
この革は、去勢されたオスの成牛、つまりステアの牛革になります。
オスの成牛ならではの繊維の丈夫さと、タンニンによってぎゅっと引き締まった革質が、弾むようなコシとなって現れています。
また、表面を覆い隠さない染料染めによって奥行きのある色合いに。
さらに、うっすらと表面にやすりがけをして滑るような表面に仕上げられています。
この、なめらかで引き込まれるような深い表情が、使い込むほどに色艶を増して美しい透明感を帯びてきます。
ブッテーロに関する詳しい説明はこちら
一点物の凹凸感と、ダイレクトに伝わる革の豊かな風合いを持つ革「HANDWASH(ハンドウォッシュ)」
こちらは「栃木レザー」と呼ばれる、栃木県のタンナー(革メーカー)がつくる革を使ったシリーズ。
この革も、去勢されたオスの成牛の原皮を使った、ステアの牛革になります。
そんな強度の高い革を、通常の約7倍もの時間をかけて植物タンニンに漬け込むことで、繊維にダメージを与えずになめされており、長くお使いいただける耐久性が魅力の革です。
さらに、特注でオイルをたっぷりと入れた革を、創業96年の老舗工房で縫製したのち、手作業でひとつひとつ洗い加工することで一点ものの凹凸感をつけています。
洗いによって引き出された革らしい表情と、1つとして同じものがない凹凸感を楽しめるシリーズです。
ハンドウォッシュに関する詳しい説明はこちら