「革のメンテナンスって具体的にどうしたら良いのかわからない」
「本当に革にとって最適なメンテナンスって何だろう」
革製品を使い始めるとき、誰もが1度は考えると思います。
今回は、本当に革のことを考えたメンテナンス方法を、より具体的に、理由を交えてご紹介します。
その方法が、次の5つのステップです。
≪手順≫
①全体にブラシをかけて埃を落とす「ブラッシング」
②水に濡らして固く絞った布で全体を拭く「水拭き」
③クリーム等で全体に油分を補給する「油分補給」
④ブラシでクリームを革に馴染ませる「ブラッシング」
⑤乾いた布で全体を拭く「乾拭き」
ここで使用する、理想的な道具は以下の5つです。
≪用意する道具≫
・馬毛ブラシ×1
・豚毛ブラシ×1
・お好みの革用クリームやオイル
・綿の布×2(水拭き用と乾拭き用)
今回の方法はあくまで一例ですが、この方法で定期的に革をメンテナンスしてあげれば、あなたの革製品の寿命を5年は延ばすことができます。
頻度に関しては、①のブラッシングについては、使った日の終わりに毎回するのが理想です。
そして、すべてのステップを行うのは、使い方や環境には依りますが、以下の期間を目安にしてください。
≪頻度≫
財布など頻繁に手で触れるもの:6~12か月に1回
それ以外:3~6か月に1回
また、いくつか注意点を見ておいてください。
≪注意点≫
・表面がコーティングされていて、油分や水分が入らない革には使えません。
・ブラッシング以外は基本的にスエードやヌバックなどの、起毛した革にもお使いいただけません。
・プエブロ等の特殊な起毛革については、全体の毛羽立ちが寝て、表面にツヤが出た後なら大丈夫です。
・ミネルバボックス等のオイルレザーは、使い始めてからす1,2年はブラッシング以外のお手入れの必要はありません。
それでは、お手入れの手順を1つずつ詳しくご説明していきます。
全体にブラシをかけて埃を落とす「ブラッシング」
まずは、革のお手入れにおいて最も重要と言ってもいいのが、このブラッシングです。
普段、革製品を使っていると、空気に舞っている砂やホコリが知らず知らずのうちに付いてしまいます。
そのホコリをそのままにしておくと、革表面の油分が吸われていってしまうんです。
細かい繊維の集まりである革は、適度な油分がないと、内部に含んでいる水分が抜けて、カサカサに乾燥してしまいます。
また、繊維間の潤滑材にもなっている油分が足りなくなると、隣り合う繊維同士が擦れてダメージが蓄積。
これらが積み重なることで、表面のヒビ割れや破れが引き起こります。
それを未然に防ぐために、ブラッシングはとっても大事な工程なんです。
クリームを塗ることばかりに目がいき、意外と軽視されがちなこの工程ですが、普段のお手入れはこれだけで十分すぎるほどです。
良い革は、日々のブラッシングだけで、引き込まれるような美しい表情を見せてくれますよ。
※この工程はホコリを落とすのが目的なので、基本的に豚毛よりもやわらかい馬毛のブラシがおすすめです。
水に濡らして固く絞った布で全体を拭く「水拭き」
意外と行っている人が少ないのがこの工程です。
しっかりと固く絞った布で全体を水拭きすることで、ブラッシングでは落とせない、こびりついたホコリなどの汚れを落とします。
また、これには表面に残っている余分な古いクリームを落としたり、完全に落とせなくても柔らかくして、続く工程で落としやすくしたりする役割もあります。
表面に残った古いクリームは、革が劣化する1つの要因。
革の表面に古いクリームが残っていると、新しいクリームを塗っても、革の内部まで水分や油分が届かなくなってしまうんです。
その状態で新しいクリームを塗っても、クリームの層が厚くなるだけで、革が内側から傷んでいってしまいます。
水拭きは、そんな状態を防ぐための工程でもあります。
しかし、「革は水に弱いって聞くけど、水拭きなんてして大丈夫?」と思う方もいると思います。
「革は水に弱い」というのは、実は正確ではありません。
革にとって水分は必要不可欠なもので、水分がなくなるとカチカチになったり、すぐに破れたりしてしまいます。
それではなぜ、水に弱いと言われるのかというと、革は水に濡れると、その水分が抜けていくときに油分も一緒になって抜けていってしまうからです。
そうなると油分が不足し、革が含んでいる適度な水分が保てなくなってカサカサに乾燥、そして破れやヒビ割れにつながってしまいます。
そのため、革に水分が入っても、カラカラに乾き切る前に油分を入れてあげれば、何も問題はありません。
革にとっては、クリームで補給する油分だけでなく、水分も必要不可欠なんです。
水拭きは、そんな革の水分を多少補給する役割も兼ねています。
※ヌメ革のように吸水性が高く色が明るい革の場合、色むらが心配な方はブラッシングのみにして、この工程は避けた方が良いかもしれません。色が濃く変化してツヤが出てきてからは行っても大丈夫です。
※タンニン鞣しで表面に加工されていない革は、特に吸水性が高いです。
クリームなどで全体に油分を補給する「油分補給」
続いてはお手入れの花形、クリーム入れです。
何気なく行ってしまいがちなこの工程は、実は最も注意する必要があります。
クリームは、程よく入れることで革に油分を与えて革の表情を綺麗に保ってくれます。
しかし、先程も説明しましたが、入れすぎてしまうと浸透しきれなかったクリームが表面に残り、革に蓋をしてしまうんです。
そうなると一生懸命クリームを塗っても栄養を補給できず、「見た目は綺麗なのに、内側は水分や油分が不足してボロボロ」なんていう状態に。
また、クリームを入れすぎて油分過多になると、湿ったように表情が落ち込み、ツヤが失われてしまいます。
そのため、クリームは「少し少ないかな」と思うくらいの量でちょうど良いと思います。
特に、お財布等の頻繁に手で触れるものは、皮脂によって油分が補給されているので、油分を多く入れる必要はありません。
少量を指や布に取り、傷みやすい縫い目や曲げ伸ばしの負荷がかかる部分を中心に、まんべんなく塗ってみてください。
※クリームやオイルは靴用のものをお使いいただいても大丈夫です。
sotで取り扱いのあるものは以下の2つです。
※手や布ではなく、クリーム塗布用のブラシも塗りやすくて便利です。
ブラシでクリームを革に馴染ませる「ブラッシング」
クリームを塗ると、どうしても縫い目やパーツの隙間に入り込んだり、部分的にクリームの量が偏ったりします。
それを放置すると表面で固まってしまい、革を劣化させる要因になってしまいます。
それを防ぐため、この工程では、豚毛などのコシのあるブラシで全体を強めにブラッシングしていきます。
これによって、余分なクリームを掻き出しながらクリームをむらなく全体に馴染ませることができます。
また、前回までのお手入れで残ってしまったクリームは新しいクリームに溶けやすいので、しっかりとした毛のブラシを使うことで、これまでの工程で取り除けなかった古いクリームも一緒に掻き出すことができます。
乾いた布で全体を拭く「乾拭き」
最後の工程は、乾いた布で革を隅々まで磨く、乾拭きです。
この乾拭きによって、表面に残っている余分なクリームを完全に取り除きながら、表面をきれいに磨いていきます。
また、この乾拭きをする前に、クリームがよく浸透するようにと時間を置く必要はないと思います。
これまでの工程でクリームを入れすぎてしまっていた場合、時間を置いてしまうと、クリームが表面に固まって残ってしまったり、油分を吸収しすぎて革の表情が沈んだりしてしまうからです。
この工程で余分なクリームを取り除きながら、丁寧に乾拭きしてあげれば、革は自然な美しい表情を見せてくれるはずです。
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今回ご紹介した方法は、靴・財布・鞄と、一般的な革を使った製品になら何でも使える方法です。
革のことをきちんと考えてお手入れすることで、素材本来の魅力が引き出され、より長く、その美しい表情を楽しむことができます。
ぜひあなたも、今日から実践してみてください。