「クリームで革に栄養を補給する」
そう聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
栄養というと、革に蓄積したダメージが回復するかのようにイメージしてしまうと思います。
しかし、実のところ、革に「栄養」を補給することはできないんです。
少し強い言い方をしましたが、結論からいうと、私たちが革の状態を保つためにクリームを使ってできることは、「加湿」と「保湿」の2点に限られます。
世の革用クリームは主に、この2点、もしくはどちらか1点の役割に重点を置いてつくられているんです。
この2点の内容を比喩的に指して、栄養補給と言うのは良いと思いますが、文字通りの意味で捉えると危険なので注意してください。
今回は、そんな革用のクリームを徹底解剖し、どのような種類のものを選べばよいかをご説明していきます。
目次
①結局、革に必要なことは何なのか。クリームに含まれる要素とその役割とは?
・「オイル(油脂)」の役割とは
・「水」の役割とは
・「ワックス(ロウ)」の役割とは
・「溶剤」の役割とは
②乳化性クリーム?油性クリーム?どれを選べば良いかわからないというあなたへ。
・オールインワンであなたの革の健康を保つ「乳化性クリーム」
・うるおい重視で繊細な素材にも使いやすい「デリケートクリーム」
・保湿重視で革のやわらかさを保つ「油性クリーム」
・ツヤ出しの専門家「油性ワックス」
結局、革に必要なことは何なのか。クリームに含まれる要素とその役割とは?
人にとっての栄養というと、ビタミンやミネラル、タンパク質など、たくさんの成分がありますよね。
それらを適切に摂取することで、体の細胞が再生したり、免疫機能が高まったりします。
しかし、「栄養」を摂って自らで再生できない革にとって、本当に必要なものはわずか2つに限られています。
それが「革の劣化を防ぐ適度な水分」と「水分を逃さないようにする成分」です。
これが最初にご説明した「加湿」と「保湿」によって革に与える要素になります。
具体的に言えば、加湿に「水」と、保湿に「オイル(油脂)」や「ワックス(ロウ)」です。
世の中のクリームには、主にこれらの成分が含まれています。
また「水と油」という慣用句があるように、これらの成分はそのままでは混ざり合いません。
そのため、この2つの成分を仲良く混ぜ合わせるために必要なのが「界面活性剤」または「溶かす薬剤」と書く「溶剤(ようざい)」です。
クリームの成分表示ではよく「有機溶剤(ゆうきようざい)」と書かれているこの薬剤を入れることで、水、オイル、ワックスが溶けて混ざり合うようになる、と考えてください。
結局のところ、一般的なクリームに入っていることが多い要素は、「水」「オイル(油脂)」「ワックス(ロウ)」「溶剤」の4つ。
付加的な成分や代替成分が入っていることもありますが、基本的にはこれら4つの成分の全て、もしくは2~3つをベースにクリームは作られています。
ここでは、それぞれの役割をご説明していきます。
「オイル(油脂)」の役割とは
お肌を保湿する乳液には、ホホバオイルやオリーブオイルなどのオイルが入っていることが多いですよね。
「保湿」
という言葉を読んで字のごとくですが、
「湿(うるおい)を保つ」
つまりお肌の水分を保つ役割を果たしてくれるのがオイルです。
お風呂上がりに、お肌の乾燥を感じたことはありませんか?
これは、体を洗うときの洗浄成分が、汚れと一緒に肌を保湿している油分を落としてしまうことが1つの原因。
革も元々は牛の肌です。
そのため、オイルによって保湿しなければ、内部の適度な水分もどんどん出ていって、乾燥してしまうんです。
また、細かい繊維の集まりである革は、使用に伴う曲げ伸ばしによって、隣合う繊維同士に摩擦が生じます。
その潤滑剤にもなっているオイルがなければ、ギシギシと繊維がこすれてダメージが蓄積していってしまいます。
それらを防ぐという重要な役割を、オイルは果たしているんです。
「水」の役割とは
「革は水に弱いって聞くけど、水分なんて本当に必要なの?」
そう思う方もいると思います。
しかし、革にとって水は必要不可欠なもの。
水分がなければ革は硬くなり、繊維はボロボロになってしまいます。
実は「革は水に弱い」というのは、正確に言うと「革は乾燥に弱い」ということなんです。
というのも、水に濡れた革が乾くとき、オイルも一緒に抜けていってしまいます。
そのため、さらに水分が抜けていって、カサカサ、ボロボロの状態に。
つまり水は、革の弱点どころか、革が硬くなったり脆くなったりするのを防ぐのに重要な要素なんです。
「ワックス(ロウ)」の役割とは
床や車に、ワックス掛けをしたことはありませんか?
ワックス掛けをすることで、表面にツヤが出て、汚れなどもつきにくくなりますよね。
これは革も同じです。
革の表面にうっすらとできるワックスの膜が効果を発揮。
ツヤが出て見た目が美しくなるのと同時に、内部の水分が抜けにくくなったり、逆に外からの水分や汚れを弾いたりする効果があるんです。
革用クリームでは、主に艶出しを主な目的として入っていることが多いです。
「溶剤」の役割とは
こちらは、先程ご説明したので簡単に。
「溶かす薬剤」、つまりオイル、ワックス、水などを溶かして混ぜ合わせるためのものです。
一部のクリームで感じる薬品的な匂いは、これが原因のことが多いです。
通常の使い方で人体に害があるほど含まれてはいませんが、有機溶剤は有害なものもあるので、気にされる方は「溶剤フリー」と明記されているものを選んでみてください。
乳化性クリーム、油性クリーム、油性ワックス。どれを選べば良いかわからないというあなたへ。
先ほどご説明したように、クリームには主に「水」「オイル(油脂)」「ワックス(ロウ)」「溶剤」の4つのものが入っています。
この中のどれを使うかで、クリームの名称が決まっているんです。
まずはこの名称をまとめておきます。
・乳化性クリーム:水、オイル、ワックス、溶剤
・デリケートクリーム:水(多め)、オイル、(ワックス)、溶剤
・油性クリーム:オイル(多め)、ワックス、溶剤
・油性ワックス:オイル、ワックス(多め)、溶剤
※メーカーによって同じ役割をする代替成分を使っている場合もあります。
また、革用クリームは世の中にたくさんありますが、それぞれに付加的な特徴があります。
例えば、香料を入れて香りをよくしていたり、撥水成分を入れて革に撥水性を与えていたりするクリームもあります。
基本的な4つの成分の役割を理解した上で付加成分も考慮し、ご自身の目的に合わせて選んでみてください。
オールインワンであなたの革の健康を保つ「乳化性クリーム」
まずは、乳化性クリームについて。
【乳化性クリームの基本成分】
水、オイル、ワックス、溶剤
こちらは水、オイル、ワックスが入っているので、オールインワン的に1つで「加湿」と「保湿」の両方の役割を果たしてくれるクリームです。
1つのクリームでお手入れを済ませたい方はこちらがおすすめ。
また、ワックスの多い・少ないによって、ツヤがよく出るか、マットに仕上がるかが決まります。
インターネットのレビューなども参考にしながら、ツヤ感のお好みに応じて選んでみてください。
ちなみに、sotで取扱っている「1909シュプリームクリームデラックス」というクリームも乳化性クリーム。
そのため、「加湿」「保湿」「艶出し」の効果があります。
乳化性クリームの中でも特殊な点は、「有機溶剤を一切使用していないこと」と「撥水成分が入っていること」です。
撥水性は防水スプレーよりは劣りますが、少しの水分は弾いてくれるので、ちょっとしたシミや汚れを防いでくれます。
うるおい重視で繊細な素材にも使いやすい「デリケートクリーム」
続いては、デリケートクリームについて。
【デリケートクリームの基本成分】
水(多め)、オイル、(ワックス)、溶剤
こちらは、一般的な乳化性クリームと似たような成分構成になっていますが、異なる点は「そのほとんどが水でできていること」と、「ワックスが少ないか、入っていないこと」です。
つまり、「加湿」に重点をおいたクリームになります。
オイルも入っているので、もちろん「保湿」も多少はしてくれます。
人の場合で例えると、「保湿成分が入った化粧水」のようなイメージですかね。
なぜ、「デリケート」クリームなのかというと、水の比率が多いことで、全体に塗り広げた時にオイルがうっすらとまんべんなく広がりやすく、繊細な素材でもシミやムラになりにくいことが理由の1つです。
一般的にシミやムラは、オイルや色素の偏りによって起きるので、蒸発しやすい水を媒介して全体に広がることでその偏りが抑えられるんです。
また、艶出しの役割もする「ワックス(ロウ)」が少ないので、仕上がりはマットになります。
うるおい重視で、マットな仕上がりが好み、そして色のムラやシミが怖い方は、このタイプのクリームがおすすめです。
保湿重視で革のやわらかさを保つ「油性クリーム」
次は、油性クリームについて。
【油性クリームの基本成分】
オイル(多め)、ワックス、溶剤
このタイプのクリームは、水が入っておらず「保湿」重視のクリームになります。
革に柔軟性を出したり、艶を出したいときに使えるクリームです。
注意点としては、カラカラに乾燥した革製品に使用するのはNGということ。
水分が抜け切った状態でオイルやワックスが表面を覆うことになってしまうので、内側からボロボロになってしまいます。
そのため、乾燥した革に油性クリームを使う際は、硬く絞った布などで全体を拭いて、汚れを落としながら「加湿」した後に、塗ってあげるとよいと思います。
から拭きやブラッシングなどでは取れない汚れをとることもできて、加湿もできるので一石二鳥です。
sotオリジナルの「ハチロウ」もこの油性クリームに分類されます。
ハチロウが他の油性クリームと違う点は、「100%天然成分」と「溶剤フリー」という2点。
菜種オイルと福岡県産の蜜蝋のみから作られており、オイルの比率の方が多い構成になっています。
安全性は最高クラスなので、溶剤が心配な方にはおすすめですよ。
ツヤ出しの専門家「油性ワックス」
そして最後は、油性ワックスについて。
【油性ワックスの基本成分】
オイル、ワックス(多め)、溶剤
こちらは、油性クリームのオイルとワックスの比率が逆転したもの。
基本成分は全く同じになります。
ワックス(ロウ)の割合が多いので、役割としては「保湿」をしながら「ツヤ出し」することをメインした構成です。
ロウ分が表面に薄い膜をつくることで表面に艶が出るので、多少の撥水性を持つようにもなります。
また、このタイプのものを使って少し特殊な塗り方をすると、鏡のような艶感が出る「ハイシャイン(鏡面仕上げ)」にすることもできます。
興味のある方は調べてみてください。
>ハイシャインについてはこちら
基本的には、ツヤを出しながら保湿をしたいときに使うと良いですが、こちらも油性クリームと同様で、乾燥した革にそのまま使うのは革にとって良くありません。
硬く絞った布などで拭いてから塗ってみてくださいね。
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