その表面をなぞってみると、すーっと滑るような肌触りが指に伝わります。
そして手に取ってみて感じるのは、しっかりとしたコシのある質感。
目を近づけてみれば、キメ細かい肌目と、うっすらとしたムラのある色合いの奥行きに引き込まれます。
植物由来の成分のみでなめされたこのスムースレザーは、触れるほど濡れたようなツヤを帯びていきます。
今回は、そんな魅力的な革「ブッテーロ(BUTTERO)」をご紹介します。
お手入れ次第で、ハッとするほど美しい表情を見せてくれる、イタリア生まれのスムースレザーです。
植物タンニンのみでつくられる「本物」の証。弾むようなコシを生み出すその作用とは?
ブッテーロ製品の中に入っている四角いタグ。
このタグは、イタリア・トスカーナ州で厳しい基準をクリアし、「植物性のタンニンのみ」でなめされたことを証明するものです。
タンニンとは、お茶やコーヒー、ワインを飲んだ時に感じる「渋み」の元になる成分。
あなたはこの渋みを感じるメカニズムをご存じですか?
実はこれは、タンニンの収れん性という性質によるものなんです。
お茶などのタンニンを含む飲み物を口に含むと、舌のたんぱく質とタンニンが化学的に結びつき、きゅっと細胞が縮みます。
この時の「口の中が引き締まるような感覚」が、タンニンの収れん性によって感じる渋みなんです。
革は、その固体部分の90%以上がタンパク質。
そのため、タンニンをしっかりと浸透させてなめすことで、皮が腐らない革に変わるのと同時に、ギュッと繊維が締まって強度が上がり、強いコシが出るんです。
ブッテーロは、樹皮などから抽出されるたっぷりのタンニンを、ゆっくりと時間をかけて浸透させています。
(栗の木は皮を鞣すタンニンの原料としてよく使われる)
これによって、跳ね返すような強いコシが生まれ、長く使い込んでも、クタクタによれてしまうことはありません。
お手入れを怠らなければ平気で10年以上はお使いいただける、とっても魅力的な革です。
使い手の思いに応えてくれる革。ゆっくりと美しいツヤを帯びていく理由。
革について「可塑性(かそせい)」という言葉を聞いてピンとくる方は、相当なマニアだと思います。
実は、タンニンと結びついて繊維の詰まった革は、この性質が強くなるんです。
聞きなれない言葉だと思いますが、「弾性」という言葉ならご存じなのではないでしょうか。
可塑性は、弾性の反対の言葉で、形が変わったときに元の形に戻ろうとしない性質のこと。
たっぷりとタンニンを浸透させたブッテーロは、この可塑性がとても強くなっています。
この性質によって、手で触れたり、乾拭きしたりするたびに、表面の細かい凹凸がだんだん平らにならされていきます。
すると、そのつるつるになった表面が、多くの光を反射するようになり、美しいツヤとなって現れてくるんです。
(ワインのコインケースを約1年使用した状態)
しかし、変形を維持しやすく、しかもスムースな表面なこともあって、小傷はどうしてもついてしまいます。
それでも、日々ブラッシングや乾拭きを繰り返すことで、その小傷も全く気にならないレベルにならされ、初めからあった模様のように自然に馴染んでいきます。
日々のお手入れに応えて、美しく表情を変える。
そんな育てがいのある革らしい革になっています。
天然の「革」を最も実感できる。柔軟性と耐久性を兼ね備えた部位とは?
革製品に使われる革には、部位ごとに名前が付いていることをご存じですか?
そして、その部位ごとに際立った特徴があるんです。
一流の革職人は、作るアイテムによって、採用する部位や繊維の方向まで考えて使い分けています。
ブッテーロに使われているのは、「ショルダー」と呼ばれる肩回りの部分。
この部分は、首や前足が動くのに合わせてよく伸び縮みするため、適度な柔らかさがあります。
さらに、背中周辺の部分に次いで、繊維がびっしりと詰まっている部分なので、丈夫さも兼ね備えています。
しかし、革製品には耐久性はもちろん重要ですが、硬くなりすぎても使いにくくなってしまいます。
ショルダーは、使いやすくありながら長くお使いいただける、強度と柔軟性のバランスに優れた部位なんです。
また、この部分には「トラ」と呼ばれる縞模様が浮き上がります。
(2つ折り財布にうっすらと入った3本のトラ)
これは、よく動く肩回りの革ならではのもので、元々の皮にあったシワが模様として残った、天然の革の証。
手のひらのシワが人それぞれ異なるように、このトラの模様も、牛それぞれで入り方が異なります。
sotのブッテーロを使った製品は小さいものがほとんどなので、トラを実感しやすい個体は少ないですが、バッグなどの革を大きく使う製品では、模様としてはっきりと現れてきます。
(大きなトラが入ったプエブロレザーのトートバッグ
均一な表情を求める人には避けられがちなトラですが、生きた証である一点物の縞模様が入った自然な表情がとても綺麗で、革好きの中には好む人も多いんですよ。
革に表現されるイタリアの色彩感覚。使えば使うほど色合いの奥行きに引き込まれる。
晴れ渡る空や、一面に広がる海。
よく見てみれば、それが青一色ではないことに気が付くと思います。
グラデーションのように濃くなっていたり、ところどころ薄くなっていたり。
そんな均一ではない色合いも、空や海が人の心を引き付ける魅力の1つだと思います。
それは革も同じ。
染料を使い、イタリアの絶妙な色彩感覚で染め上げられたブッテーロは、色合いに何とも言えない味わいがあります。
確かに、顔料で染めた革と比べると、表面がコーティングされていないので、傷や汚れは付きやすいです。
しかし、革本来の表情が透けて見える透明感と、うっすらとしたムラ感が重なり、その表情をより奥深くしてくれます。
さらに魅力的なのは、タンニンの作用によって、この色がもっと深みを増していくということ。
例えば、木の幹を考えてみましょう。
外側の樹皮はこげ茶色でも、スパッと輪切りにして断面を見てみると、内側はきれいなベージュ色をしていますよね。
これは、タンニンを含む木という植物が、常に紫外線や空気にさらされているため。
これと同じように、タンニンと結びついた革も、使い込むうちに色の深さを増していくんです。
(上:新品 下:1年使用 カラー:ブルー)
きめ細かな肌の上に表現される奥行きのある色合いと、その美しい表情の変化を、あなたもぜひ体感してみてください。
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