歩くたびに折れ曲がり、甲に入っていく革靴のシワ。

強く引っ張り、ピンを穴に通すたびに入る革ベルトのシワ。

手のひらに入った手相が変えられないように、これらの革のシワも、一度つくと変えることはできません。

そして、その時に生まれるシワの細かさは、革の質を見極める1つの基準にもなります。

繊維がしっかりと詰まっていて、内部の結合が密な革には、ボコボコとした大きなシワは入らず、チリチリとした繊細で細やかなシワが入ります。

しかし、質の低い革を使っていても、質の高い革と同じようなシワを入れる方法があると言ったら信じられますか?

今回はそんな、革のシワを美しくする方法をご紹介します。

新品の革靴や革ベルトをおろす際には、ぜひ参考にしてみてください。

なぜ、あなたの革製品のシワは美しくないのか。革にシワができるメカニズムとは?

一般的な革は、大きく「2つの層」からできているということをご存知ですか?

1つは、繊維が密でなめらかな革の表面の層(銀面)。

そしてもう1つは、繊維が荒くスエードとしても使われる裏側の層(床面)です。

この2層の構造に、革のシワの秘密があります。

新品の革靴を履いて歩き出す瞬間をイメージしてみてください。

足を通してぎゅっと紐を縛り、歩き出します。

一歩踏み出して地面を蹴り出す瞬間、指の関節が曲がるのに連動して、革は銀面を内側にして大きく折れ曲がります。

このときに、波打つように銀面と床面の間にスキマが生まれます。

これによって銀面がシワとなって浮き上がるんです。

密度が詰まった原皮を使い、丁寧に鞣し、過度な熱を加えたりや厚いコーティングをせずに仕上げられた革ほど、銀面と床面が強く結びつき、スキマができにくくなります。

そんな革は、ラフに折り曲げてもチリチリと細かいシワが寄るだけの質の高い革になります。

つまり、このシワの入り方が、目には見えない革の内側の質を測る1つの目安になります。

しかし、全く同じ作り方をした革でも、個体や部位、繊維方向によってもシワの入り方は異なります。

そのため、お店で同じものを複数を見比べられるときには、折れ曲がっている部分のシワに注目してみるのも、良い個体を見つけるポイントになります。

ぜひ、参考にしてみてください。

ご紹介するのは、革靴や革ベルトのシワを美しくする新しい方法です。

細かいシワが美しく入る最高級の革。

普通の革をそんな革にできるだけ近づける方法があるとしたら信じられますか?

全く同じ革を使っていても、この方法を実践するのとしないのとではシワの入り方がまるで違います。

同じなめし方をした革を使った靴同士で比べたときの違いをまず先にお見せします。

(単純に履いてシワを入れたもの)

(今回の方法を実践してシワを入れたもの)

いかがでしょうか?

シワの細かさが違いますよね。

この革はどちらも、フランスの有名タンナーがつくる高級レザーですが、今回の方法を実践した靴の方が、より一層細かくシワが入っているのがお分かりになると思います。

続いては革ベルト。

(単純に折り曲げてシワを入れたもの)

(今回の方法を実践してシワを入れたもの)

きめ細かさが雲泥の差ではないでしょうか?

ちなみにこの2つのベルトは、価格3,000円の全く同じものです。

最初の単純に折り曲げていった方のベルトはボコボコとした大きなシワができていますが、もう一方はチリチリと細かくシワが入り、3万円クラスの革に見える程になっています。

つまり、この方法を実践するだけで、ワンランク上の革と同等のシワを作ることができるんです。

その方法とはズバリ「革を強く引っ張りながら曲げること」です。

先程シワのできるメカニズムをご説明しましたが、革を折り曲げたときに銀面がたわみ、床面との間にスキマが生まれることが大きな原因。

そのため、折り曲げる際に革を強く引っ張ることで、銀面がたわむ余地がなく、隙間ができにくくなるんです。

これによってシワがより細かくなるというのが理由です。

それでは、革靴や革ベルトに綺麗にシワを入れたい場合、実際にはどのようにすれば良いのでしょうか。

まずは革靴について。

革靴の甲に入るシワは、細かければ細かいほどその靴の美しさにつながります。

最も目に入る部分でもあるので、履いている時のテンションにも影響するでしょう。

そんな革靴の履きジワをより細かく入れたい時には、新品時の足入れの際に、「パンパンになるくらいインソールを入れる」という方法が有効です。

厚くインソールを入れてパンパンになると、それだけ革が強く引っ張られる状態になります。

この状態でカカトを上げて甲を折り曲げることで、銀面と床面の間にスキマができる余地がなくなり、チリチリと細かいシワを入れることができます。

新品の靴を履き下ろす際にはぜひ実践してみてください。

続いては革ベルトについて。

一般的なベルトのバックルでは、革の穴にピンを通す際に銀面を内側に革をぎゅっと折り曲げることになるため、通す穴周辺には必ずシワが生じます。

このときのシワを綺麗に入れるためには、あらかじめ全体にシワを入れておくと全体が綺麗に見えます。

一例としては、バックル部分を誰かに掴んでもらって(一人でやる場合は足で踏むなどで固定して)、もう片側にボールペンなどを当てて折り曲げながら強く引っ張るという方法が有効です。

こうして伸ばしながら折り曲げることで、銀面の浮きを抑えながら、より細かいシワを入れることができるんです。

他の革製品でも同じように「引っ張りながら折り曲げる」ことで、より細かいシワを入れることができます。

自分の気に入った革製品に美しくシワが入ると、身に付けているだけで気分もポジティブになると思います。

今回ご紹介した方法を参考に、より革製品を楽しんでみてくださいね。