革製品最大の魅力の1つである、艶やかで奥深い色へと変わっていく表情の変化。
その変化を楽しむためのお手入れが、知らないうちに逆効果になってしまうことがあることをご存知ですか?
今回は、そんな残念な状況を防ぎ、革の美しい変化を引き出すための3つのポイントをご紹介していきます。
<目次>
①表面がコーティングされているかをチェックしましょう。
・知っておくべき革のコーティングの2つのパターン
・革がコーティングされているかを簡単に判別する方法
②それぞれの場合に応じた、適切なお手入れとは?
③お手入れのしすぎは逆効果。とにもかくにもブラッシングです。
POINT①表面がコーティングされているかをチェックしましょう。
革製品を適切にお手入れするためにはまず、その革の性質を見極める必要があります。
具体的にいうと「革の表面がコーティングされているかどうか」が、お手入れをする上で重要なチェックポイントになります。
ここでは、コーティングの種類やその簡単な判別方法についてご説明していきます。
知っておくべき革のコーティングの2つのパターン
結論から言うと、革のコーティングには主に次の2パターンがあります。
①染色によるコーティング
②仕上げによるコーティング
まず、①について。
革を染めるときには、色を革内部まで染み込ませる染料と、ペンキのように色を乗せる顔料のどちらか(または両方)を使います。
このときに顔料を使うと、革の表面はコーティングされることになります。
街でよく見かけるドクターマーチンなどの革靴も、革の表面をスムースに削って上から顔料を乗せた革(ガラスレザー)が多いですね。
また、ハイブランドがよく使う、均一なシボで色の濃淡のない革も顔料を使った革がほとんどです。
顔料を使うのは主に、傷を隠しながら均一的で鮮やかな色を出せるというのと、どの個体もほぼ同じ色に仕上げることができるからです。
そして、②の仕上げによるコーティングについて。
これは、水や汚れが染み込まないようにしたり、強いツヤを出したりするために「ウレタン」などを革の表面に塗り込む方法です。
「エナメル」もこの加工をした革の1つ。
樹脂による膜が表面を覆うので、均一なツヤのある表情を出すことができます。
どちらのパターンにせよ、革の表面が覆われることになるので、革の素肌を楽しむことはできないですが、汚れに強くなったり、ムラのない表情に仕上げたりすることができるのがメリットになります。
革がコーティングされているかを簡単に判別する方法
それでは、コーティングされているかどうかをどのように確認すれば良いのでしょうか。
その方法の1つは、「目立たない部分を軽く濡らしてみて、水が染み込むかどうかをチェックする」という方法です。
防水スプレーなどで撥水加工をしていなければ、この方法でコーティングされているかどうかを簡単に確認できます。
顔料によるコーティングにせよ、ウレタン系によるコーティングにせよ、革の表面を膜が覆うことになるので、どちらも水を吸い込むことはありません。
そのため、水が染み込めば、コーティングはされていないと判断することができます。
水が染み込んだかどうかはその部分がワントーン暗い色になるのでわかりやすいと思います。
まとめると、
ーーー
軽く水で濡らしてみる
↓
水が染み込む:コーティングされていない革
水が染み込まない:コーティングされている革
ーーー
という判断になります。
また、自分で判断できなそうであれば、ブランドに確認するのが最も確実な方法です。
まずは商品ページに染色方法や仕上げの方法が書いていないか確認してみてください。
その上でわからなければ、お問い合わせから「クリームが染み込むか確認したいのですが、この革は顔料やウレタンなどで仕上げられていますか」と聞いてみてください。
ちなみにsotが使う革には、金色の箔を貼ったエコムラレスシリーズなどの特殊な革を除いて、コーティングはしていません。
POINT②:それぞれの場合に応じた、適切なお手入れとは?
コーティングの有無がわかったら、次はそれぞれの場合に応じて適切にお手入れすることが必要です。
お手入れといえば、クリームを塗る印象が強いと思いますが、実はコーティングされている革の場合、クリームを塗っても油分は補給できません。
膜が表面をコーティングしているので、水分も油分も弾かれてしまうんです。
ですが、裏を返せばこの膜によって、コーティングされていない革に比べて革内部の適度な水分や油分が出ていきにくいということになります。
そのため、コーティングされている革に対してできることは、乾拭きや水拭きで膜の上についた汚れを落とすくらいになります。
一方、sotが使っているような、コーティングされていない革の場合は、まず「オイルの量が多い革(オイルレザー)かどうか」を確認してください。
自分の肌と同じような感覚で、触った時に革表面がしっとりとしている場合は、オイルが多めの革になります。
また、このタイプの革は、見た目としては暗めの色合いのことが多いです。
そんなオイルを多く含む革の場合は、基本的にはクリームを入れる必要はありません。
定期的にブラッシングをして、革の表面についてしまう細かい埃や砂を落とすのが最適なお手入れ方法になります(スエードやヌバックも同様)。
というのも空気中に舞っている埃や砂は、知らず知らずのうちに表面にくっついて革の油分を吸収。その結果、乾燥につながってしまうからです。
オイルレザーではない場合は、3~6ヶ月に一回クリームを入れて乾燥を防ぎ、普段はブラッシングするくらいで十分です(具体的な方法についてはこちら)
結局、まとめると、
ーーー
<コーティングありの場合>
汚れが付いたら水拭きや乾拭きで落とす。
<コーティングなしの場合>
オイルレザーの場合:
定期的にブラッシングする。
オイルレザー以外の場合:
定期的にブラッシングしながら、
3~6ヶ月に1回クリームを入れる。
ーーー
という形になります。つまり、コーティングしてある革や、コーティングはしてなくてもオイルをたくさん含む革には、基本的にクリームは不要ということです。
「革」だからと思ってクリームを入れても、意味がなかったり、この後ご説明しますが、逆効果になったりもするので注意してください。
POINT③:お手入れのしすぎは逆効果。とにもかくにもブラッシングです。
「過ぎたるは及ばざるが如し」
という言葉がありますが、お手入れしすぎも革にとってよくありません。
より具体的には、革をきれいに変化させようとクリームを入れすぎると、いつまで経ってもツヤの出ない革になってしまうんです。
というのも、クリームを何度も入れると革が油分過多になり、湿ったように表情が沈んでしまうからです。
特にお財布やキーケースなどの普段よく手に触れるものは、皮脂で適度に油分が補給されている状態になっています。
そのため、そこからさらに頻繁にクリームを塗ってしまうと明らかに油分が多くなりすぎてしまいます。
油分が多くなると、艶が出にくくなるのに加えて革自体も伸びやすくなるので、型崩れの原因にも。
肌と違って革は、水で洗うということ自体ほとんどないため、そんなに簡単に油分が抜けることはありません。
クリームを塗った後、3日経っても表面がしっとりしている場合は、塗り過ぎている可能性が高いです。
その場合は、自然に油分が抜けるまで油分補給をお休みしてください。
また、ワックス(ロウ)成分が多いクリームは、表面にツヤが出やすいですが、その代わりに膜ができやすくなります。
革が乾燥した状態で表面にロウの膜ができてしまうと、内部の劣化が進んでしいます。
そのためその状態でクリームを塗り続けても、ロウの膜が厚くなるだけで、内部に油分が補給できなくなってしまうんです。
そのため、クリームは入れ過ぎないように十分注意してくださいね。
ですが、頻繁に行っても革に悪影響を及ぼさない、むしろ、すればするほど良いお手入れ方法が1つあります。
それが「ブラッシング」。
これが、コーティングの有無、油分の多い少ないに関わらず、基本でありながら最も重要なお手入れになります。
自然に付いてしまう空気中の砂や埃を落とすのに有効でありながら、「タンニン」でなめされたコーティングなしの革の場合は、このブラッシングだけで美しい経年変化を引き出すことができます。
いわゆる「ヌメ革」に代表されるようなタンニンなめしの革は、摩擦によって表面がなめらかになりやすい「可塑性(かそせい)」という性質が強くなります。
そのため、手でたくさん触れたり、ブラッシングしたりすることで、表面の凹凸がならされてつるつるに。
その上に、皮脂や革内部のワックス成分がうっすらと馴染むことで、自然できれいなツヤが出てくるんです。
気が向いたら念入りにブラッシングする癖をつけて、ほどほどにクリームを入れることで乾燥を防げば、あなたの革はいつまでも美しい表情を見せてくれるはずです。
ぜひ実践してみてくださいね。
<まとめ>
①次のいずれかの方法で表面がコーティングされているかをチェックしましょう。
・目立たない部分を軽く濡らして、水が染み込むか確認する。
・ブランドに確認する。
②コーティングの有無に応じて、適切にお手入れしましょう。
<コーティングなしの場合>
オイルレザーの場合:
定期的にブラッシングする。
※スエードやヌバックも同様。
オイルレザー以外の場合:
定期的にブラッシングしながら、
3~6ヶ月に1回クリームを入れる。
③クリームの入れ過ぎは逆効果。普段のお手入れは「ブラッシング」が最も効果的です。
※クリームを使う時のお手入れ方法はこちら